孤高の2人が手を繋ぐとき

 私立図書館に到着した2人は、各々が得意なパートで検索を開始した。

 燈矢は図書館のロビーで、椅子に座ってスマートフォンを睨み付ける。探すのは教師が語らなかった10年前ので出来事についてだ。なぜか、どうしても制服が変わった理由が知りたくなった。こういう第六感的なものを燈矢は大事にしている。現在調べている超常現象的なものについては尚更だ。
 春斗は図書館の中に入り、データとして保してある過去の新聞記事を閲覧していた。記事の内容がデータベースになっている訳ではない。あくまでも紙面が画像として保管されているだけであり、調べるには時間が必要だった。それでも、これ以外に方法が見付からない現状では、どんなに非効率でも仕方がなかった。

 開始して1時間が過ぎた頃に、燈矢の調査活動は完全に行き詰った。思い付く限りの単語と、単語同士の組み合わせを検索し尽くしたのだ。いくらインターネットが普及した時代とはいえ、そもそもブログ等に記事をアップしていなければ何も残っていない。10年前に起きた、しかも地方都市の制服が変わったというだけの出来事は1行も見付からなかった。
 ただ、その代わりに思い出したくもない記事は見付けた。
 ―――――小学1年生の男の子が、飲酒運転のトラックにはねられて重傷。
 もう、燈矢の記憶は随分と薄れているが、「どうせなら、当日1日分の記憶を全て忘れてしまいたい」と思っている。

 その頃、春斗も10年前の新聞記事を調べながら思案していた。白蝶女子高校の制服が変わったのは、燈矢が交通事故に遭った翌年の新入生からだった。もし、何かしらの事情があって制服を変更しなければならなかったのであれば、何らかの情報が残っていても不思議ではない。しかし、何者かが意図的に消去したのではないかと思うほど、何の痕跡も見付けることができなかった。
 その代わり、燈矢が思い出したくないであろう記事は見付けた。
 ―――――小学1年生の男の子が、飲酒運転のトラックにはねられて重傷。
 理由は明確ではないが、春斗はどうしもこの交通事故のことが気になって仕方が無かった。普段から除霊の仕事に携わってきた経験から、春斗はこういった直感的なものを大切にしている。


 図書館に到着して2時間が経過した頃、ロビーでだらけていた燈矢の元に春斗が歩いて来た。疲れ果てたその様子から、今日の調査は終了のようだ。
「何で、そんなにダラダラしてるの?ちゃんと調べたんだろうね」
 短時間で目の下にクマを作った春斗が、怨めしそうに声を掛ける。睡魔に倒される直前だった燈矢は、頭を振って目を覚ました。
「寝てない、寝てない。絶対に、寝てない」
「それ、キレてないですよ、と同じレベルなんだけど。まあ、でも、とりあえずそれは置いといて、何か分かったことがあった?」

 相手にするのも面倒臭いのか、春斗は燈矢の処分を後回しにして結果の確認を優先する。
「気持ち悪いレベルで、何も無い。白蝶女子高校プラス制服で検索しても、10年前の年月で調べてみても何もでてこない。さずがに、何か出てきても良いと思うんだよ。これだけ徹底的にヒットしないと、逆に何かありそうな気がしてくるぜ」
 「ふむ」と、春斗が腕を組んで考える素振りを見せる。
「ボクも同じ感想だよ。過去の新聞記事をザっと確認してみたけど、ビックリするくらい記事にもなってない。でもさ、当たり前に考えて、人気があった制服を変更するには相当な理由があったと思うんだよね。例えば、白蝶女子高校に重大な不祥事があって、負のイメージを払拭するために制服を変したとか、ね」

 白蝶女子高校は伝統がある私立の学校法人だ。幼稚園から大学まであり、高等部は偏差値が65以上の進学校でもある。地域に根ざした学校であり著名人の卒業生も多い。当然、この地域での影響力は絶大だ。

「と言うかさ、何となく気になっていることがあるんだけど、そっちを優先してもらっても良いかな?」
 春斗が申し訳無さそうに口にすると、燈矢も同様に提案をしてきた。
「オレもさ、ちょっと引っ掛かることがあるんだよな」
 燈矢と春斗の視線が交わる。それだけで、お互いが同じことを考えていることが分かった。

「捨ててないはずだから、引き出しのどこかに封書があると思う。一度しか読んでいないから内容なんて覚えてもいないが、住所と名前が書いてあったと思う」
 燈矢の説明に春斗が頷いた。
「じゃあ、明日はこっそりバイク通学しようか。ちょっと離れた駐輪場に停めておけば大丈夫だよね。自転車や電車で移動するの面倒臭いし。あ、車庫にあるスクーター借りるよ」
 春斗の受け答えを聞いていた燈矢が目を見開いている。優等生然とした春斗のイメージとは掛け離れた提案だったようだ。
「それでいこう」
「一応、御札も10枚くらいは持って来てね。万が一ってこともあるから」


 こういうセリフを巷ではこう言うらしい。
 フラグを立てる―――――と。