燈矢と春斗が話しをしていると、不意に入口のドアが開いた。
一瞬、燈矢の、現状では春斗の取り巻きかと思って2人は身構えたが、若い女性教師だった。2人ともあまり記憶になかったため、何の授業を担当しているのかは不明である。しかし、視聴覚室の管理をしているということは、英語の担当教師か何かだろう。
教師は2人の元へと近付いてくると、穏やかな表情のままで話し掛けてきた。
「あなた達、ここは食堂ではないから、汚さないようにしなさいよ。もし、食べ物を落とした場合は、きちんと拾って帰ること」
強めに注意されるものと思った2人であったが、意外にも物分りの良い教師のようで安堵する。教師はそのまま2人に近付いてくると、春斗の前に置いてある紙に視線を落とした。
「あら、白蝶女子高校の制服?青春時代を思い出すわ。とは言っても、共学に進学すれば良かったと、今となっては後悔しているけれど」
燈矢と春斗が、反射的に顔を上げた。
しかし、そんな2人の様子に気付くことなく、教師のひとり語りは勢いを増していく。
「やっぱり、青春て共学の中でしか盛り上がらないわよね。文化祭でフォークダンスとか。でも、なぜあなた達が以前の制服を知っているの?分かった。マニアね、制服マニア。淡いグレーのブレザーにお揃いフレアースカート。白いフリフリが付いたブラウスにピンクのリボン。可愛いわよね。それで高校を決めたようなものだしね。でもね、やっぱり―――――」
「あ、あの、先生」
意を決して陽斗が口を開く。
「共が―――――何かしら?」
「その、それが白蝶女子高校の制服というのは間違いないんですか?」
教師は腰に手をやると、無駄にポーズを決めて胸に手を当てて答えた。
「私が3年生に上がる時に変わったから間違いないわ。新入生から今の可愛くないバージョンに変更されたの」
その説明を聞くと同時に、燈矢と春斗は顔を見合わせた。
「それで、それはいつ頃のことなんですか?」
春斗の問いに教師が顔の前で腕をクロスにする。
「女性に年齢が分かる質問をするのはNGよ。えっと、小金井君よね。担当の先生に30点原点するように伝えておくからね。というのは半分本気だけど、おそらく10年前かしらね・・・」
教師は考える素振りをした後、軽く頷いて再度答えた。
「間違いないわ。ちょうど今年で10年ね」
すると、燈矢が首を傾げながら質問を重ねる。
「どうして、人気があった可愛い制服を、地味で不人気なものに変更したんですか?」
燈矢の質問に対し教師は口ごもると、なぜか両腕で自らの身体を抱き締めるようにした。
「それは、ちょっと・・・知りたければ、自分で調べてね。きっと、大道寺君なら理由が分かると思うから」
そこまで話すと、教師は壁に掛かった時計を確認して視聴覚室を出て行った。
その後ろ姿を見送った2人は、再び視線を合わせると拳を突き合わせる。
「10年前に変わった制服とか、分かる訳がないわ」
「春斗になら理由が分かるって言われたのがチョット引っ掛かるけどな」
春斗は自分の隣に佇む女子高生に視線を向けると、意図的に言葉を漏らしてみる。
「白蝶女子高校」
すると、ずっと微笑みを湛えていた表情が僅かに反応を示した。春斗に憑いていた霊とは違い、まだ周囲の声を判別する能力は残っているに違いない。それならば、確率は低いものの説得できる可能性が残っている。
その後、バラバラに教室に戻った2人は。各々が放課後まで思案を巡らせた。
現状、燈矢に憑いている霊について分かっていることは3つ。まず1つ目は、亡くなった当時、白蝶女子高校の生徒だったということ。2つ目は、燈矢に憑いた時期を考えると、ちょうど10年前に在学していた可能性が高い。そして最後に、10年前の7月から9月にかけて、何らかの理由で亡くなったということだ。
ここまで分かっていれば、コノ人物が誰なのかを特定することは、そんなに難しいことではないだろう。
放課後、いつものように速攻で教室を後にした春斗を見送った後、燈矢は取り巻きの女子生徒達と優雅にすれ違って駐輪場に向かった。そこで先に到着していた春斗と合流する。
「どうする?とりあえずネットに潜るのは当然として、地方新聞の記事とかも確認した方が良いかもね」
春斗の提案に燈矢が頷く。
「だな。10年も前の事になると在校生は知らないだろうし、先生の反応を見る限り卒業生も話してくれない可能性が高いな」
「じゃあ、図書館までレッツゴーだね」
こうして、2人は10年前の出来事を調べるために私立図書館に向かった。私立図書館は自転車で15分程度、電車であれば1駅という位置にある。偶然にも、白蝶女子高校への最寄り駅は図書館と同じだ。
春斗の視線の先で、温和な表情の霊が少し笑みを深めた気がした。
一瞬、燈矢の、現状では春斗の取り巻きかと思って2人は身構えたが、若い女性教師だった。2人ともあまり記憶になかったため、何の授業を担当しているのかは不明である。しかし、視聴覚室の管理をしているということは、英語の担当教師か何かだろう。
教師は2人の元へと近付いてくると、穏やかな表情のままで話し掛けてきた。
「あなた達、ここは食堂ではないから、汚さないようにしなさいよ。もし、食べ物を落とした場合は、きちんと拾って帰ること」
強めに注意されるものと思った2人であったが、意外にも物分りの良い教師のようで安堵する。教師はそのまま2人に近付いてくると、春斗の前に置いてある紙に視線を落とした。
「あら、白蝶女子高校の制服?青春時代を思い出すわ。とは言っても、共学に進学すれば良かったと、今となっては後悔しているけれど」
燈矢と春斗が、反射的に顔を上げた。
しかし、そんな2人の様子に気付くことなく、教師のひとり語りは勢いを増していく。
「やっぱり、青春て共学の中でしか盛り上がらないわよね。文化祭でフォークダンスとか。でも、なぜあなた達が以前の制服を知っているの?分かった。マニアね、制服マニア。淡いグレーのブレザーにお揃いフレアースカート。白いフリフリが付いたブラウスにピンクのリボン。可愛いわよね。それで高校を決めたようなものだしね。でもね、やっぱり―――――」
「あ、あの、先生」
意を決して陽斗が口を開く。
「共が―――――何かしら?」
「その、それが白蝶女子高校の制服というのは間違いないんですか?」
教師は腰に手をやると、無駄にポーズを決めて胸に手を当てて答えた。
「私が3年生に上がる時に変わったから間違いないわ。新入生から今の可愛くないバージョンに変更されたの」
その説明を聞くと同時に、燈矢と春斗は顔を見合わせた。
「それで、それはいつ頃のことなんですか?」
春斗の問いに教師が顔の前で腕をクロスにする。
「女性に年齢が分かる質問をするのはNGよ。えっと、小金井君よね。担当の先生に30点原点するように伝えておくからね。というのは半分本気だけど、おそらく10年前かしらね・・・」
教師は考える素振りをした後、軽く頷いて再度答えた。
「間違いないわ。ちょうど今年で10年ね」
すると、燈矢が首を傾げながら質問を重ねる。
「どうして、人気があった可愛い制服を、地味で不人気なものに変更したんですか?」
燈矢の質問に対し教師は口ごもると、なぜか両腕で自らの身体を抱き締めるようにした。
「それは、ちょっと・・・知りたければ、自分で調べてね。きっと、大道寺君なら理由が分かると思うから」
そこまで話すと、教師は壁に掛かった時計を確認して視聴覚室を出て行った。
その後ろ姿を見送った2人は、再び視線を合わせると拳を突き合わせる。
「10年前に変わった制服とか、分かる訳がないわ」
「春斗になら理由が分かるって言われたのがチョット引っ掛かるけどな」
春斗は自分の隣に佇む女子高生に視線を向けると、意図的に言葉を漏らしてみる。
「白蝶女子高校」
すると、ずっと微笑みを湛えていた表情が僅かに反応を示した。春斗に憑いていた霊とは違い、まだ周囲の声を判別する能力は残っているに違いない。それならば、確率は低いものの説得できる可能性が残っている。
その後、バラバラに教室に戻った2人は。各々が放課後まで思案を巡らせた。
現状、燈矢に憑いている霊について分かっていることは3つ。まず1つ目は、亡くなった当時、白蝶女子高校の生徒だったということ。2つ目は、燈矢に憑いた時期を考えると、ちょうど10年前に在学していた可能性が高い。そして最後に、10年前の7月から9月にかけて、何らかの理由で亡くなったということだ。
ここまで分かっていれば、コノ人物が誰なのかを特定することは、そんなに難しいことではないだろう。
放課後、いつものように速攻で教室を後にした春斗を見送った後、燈矢は取り巻きの女子生徒達と優雅にすれ違って駐輪場に向かった。そこで先に到着していた春斗と合流する。
「どうする?とりあえずネットに潜るのは当然として、地方新聞の記事とかも確認した方が良いかもね」
春斗の提案に燈矢が頷く。
「だな。10年も前の事になると在校生は知らないだろうし、先生の反応を見る限り卒業生も話してくれない可能性が高いな」
「じゃあ、図書館までレッツゴーだね」
こうして、2人は10年前の出来事を調べるために私立図書館に向かった。私立図書館は自転車で15分程度、電車であれば1駅という位置にある。偶然にも、白蝶女子高校への最寄り駅は図書館と同じだ。
春斗の視線の先で、温和な表情の霊が少し笑みを深めた気がした。



