小金井の中にいる大道寺は、自分も小金井の自宅がどこにあるのか知らないことに気が付き、自宅の住所を送信した後ですぐにメッセージを送った。すると、意外な内容の返信があった。
>住所は地図付きで送るから、帰宅する前に寄ってもらい場所があるんだ。あけぼの幼稚園に、妹の心愛を迎えに行ってくれないか。
「・・・は?」
大道寺は元々小金井と関わりがなかったため、妹がいることなど知らなかった。しかも、その妹が幼稚園児ということは10歳以上離れているということになる。色々事情があるのかも知れないが、それを聞くだけの関係性が2人の間には存在しない。ただ、この依頼を断ることができないことは大道寺にも分かった。
>了解した。幼稚園の住所と地図も送ってくれ。
大道寺にとっては余計な情報ではあるが、小金井は電車通学だった。月花高校の最寄り駅である桜が丘中央駅から電車に乗り、3駅目の春日台駅で下車。そこから徒歩で15分ほどの場所だ。あけぼの幼稚園は、春日台駅と自宅のちょうど中間辺りにあった。
大道寺は纏わり付く女性の視線に不快感を覚えながら、妹が待つ幼稚園に向かって歩く。他人事ながら、女性の視線が面倒臭い。だが、いつも聞こえていた息苦しくも煩わしい、あの「声」が聞こえないだけマシだと思う。これだけが、入れ替わって良かったと感じることだった。
やがて鉄柵に囲まれた敷地が見えてきた。門の横に「あけぼの幼稚園」という看板が掲示されている。
大道寺は教室で見掛けていた小金井ぽい雰囲気を作り、堂々とした態度で門を通り抜けた。すると、初対面の馴れ馴れしい態度の女性が駆け寄ってきた。おそらく、この幼稚園の先生なのだろう。小金井っぽさを想像し、先生に挨拶をする。
「やあ、先生。今日も美しいですね。マイ・シスターの心愛を迎えに来たのですが」
すると、先生は唖然とした表情のまま固まってしまう。その瞬間、自分の間違いに気付いた大道寺は、すかさず対応を常識人ベースに変更した。
「いつもお世話になります。心愛を迎えに来たのですが、どこにいますか?」
どうやら正解だったらしく、先生が我に返った。小金井は予想とは違うことを理解し、大道寺は心の中で手を合わせて頭を下げた。
「すべり台の上にいます。呼んできますね」
先生は狭い園庭の真ん中にある低いすべり台の上で、外に向かって「やっほー」と叫んでいる女の子の元に駆けて行った。
しばらくすると、女の子が先生に連れられてきた。
どう考えても、この女の子が妹の心愛だろう。小金井とは似ていないが、あと5年もすれば、男の子がハエのように群がってくるに違いない。それほどの美少女になることが約束されている顔立ちだ。肩より10センチ以上長い黒髪を、背中で虹色の髪留めでまとめている。誰の趣味なのかわ分からないが、なかなか趣のある髪留めだ。
「えっと、帰ろうか」
大道寺は軽い口調で心愛に声を掛ける。どういう付き合い方をしているのかは分からないが、とりあえず右手を差し出す。すると、心愛はその手をジッと見詰めた後で、顔を上げて首を傾げた。
「誰ですか?」
屈託のない瞳が大道寺を捉えた。
その瞬間、大道寺は悟った。理由は分からないが、心愛の目は小金井の中にいる自分を見詰めていると。ここで嘘を吐いてはいけないと、第六感が警鐘を鳴らす。その直感に大道寺は従うことに決めた。
「お兄ちゃんの友達。どうしてかは分からないけど、中身が入れ替わってるんだよ」
我ながら何を言っているのか分からない。隣にいる先生も苦笑いしている。それでも、心愛は大道寺を見上げて質問する。
「お兄ちゃん、帰ってくるよね?」
真剣な表情の心愛に大道寺は笑顔で答える。
「もちろん」
「分かった」
心愛は大道寺が差し出した手を握り締めると、先生に向かって手を振った。
「先生、さよなら」
大道寺も頭を下げると、心愛の手をしっかりと握って小金井の自宅に帰る。隣で心愛がよく分からない曲を歌っているが、おそらく幼児向けアニメの主題歌なのだろう。時々キャラクターの名前が登場している。
それにしても、なぜ心愛には入れ替わっていることが分かったのだろうか。後で小金井にこのことを連絡し、直接話しをしてもらった方が良いだろう。そうすれば安心させることができるし、何かと協力してもらえるかも知れない。
小金井の自宅は一般的な戸建て住宅だった。車庫は2台分あるものの空いた状態で、両親とも働きに行っていることが分かる。そもそも、小金井が心愛を迎えに行っている時点で分かっていたことではある。門を開けると心愛が手を放して玄関のドアの前に立った。大道寺は持っていたカバンの中を漁り、自宅のキーを発見して鍵を開ける。玄関に駆け込むと同時に、心愛の声が響き渡った。
「ただいまあ」
>住所は地図付きで送るから、帰宅する前に寄ってもらい場所があるんだ。あけぼの幼稚園に、妹の心愛を迎えに行ってくれないか。
「・・・は?」
大道寺は元々小金井と関わりがなかったため、妹がいることなど知らなかった。しかも、その妹が幼稚園児ということは10歳以上離れているということになる。色々事情があるのかも知れないが、それを聞くだけの関係性が2人の間には存在しない。ただ、この依頼を断ることができないことは大道寺にも分かった。
>了解した。幼稚園の住所と地図も送ってくれ。
大道寺にとっては余計な情報ではあるが、小金井は電車通学だった。月花高校の最寄り駅である桜が丘中央駅から電車に乗り、3駅目の春日台駅で下車。そこから徒歩で15分ほどの場所だ。あけぼの幼稚園は、春日台駅と自宅のちょうど中間辺りにあった。
大道寺は纏わり付く女性の視線に不快感を覚えながら、妹が待つ幼稚園に向かって歩く。他人事ながら、女性の視線が面倒臭い。だが、いつも聞こえていた息苦しくも煩わしい、あの「声」が聞こえないだけマシだと思う。これだけが、入れ替わって良かったと感じることだった。
やがて鉄柵に囲まれた敷地が見えてきた。門の横に「あけぼの幼稚園」という看板が掲示されている。
大道寺は教室で見掛けていた小金井ぽい雰囲気を作り、堂々とした態度で門を通り抜けた。すると、初対面の馴れ馴れしい態度の女性が駆け寄ってきた。おそらく、この幼稚園の先生なのだろう。小金井っぽさを想像し、先生に挨拶をする。
「やあ、先生。今日も美しいですね。マイ・シスターの心愛を迎えに来たのですが」
すると、先生は唖然とした表情のまま固まってしまう。その瞬間、自分の間違いに気付いた大道寺は、すかさず対応を常識人ベースに変更した。
「いつもお世話になります。心愛を迎えに来たのですが、どこにいますか?」
どうやら正解だったらしく、先生が我に返った。小金井は予想とは違うことを理解し、大道寺は心の中で手を合わせて頭を下げた。
「すべり台の上にいます。呼んできますね」
先生は狭い園庭の真ん中にある低いすべり台の上で、外に向かって「やっほー」と叫んでいる女の子の元に駆けて行った。
しばらくすると、女の子が先生に連れられてきた。
どう考えても、この女の子が妹の心愛だろう。小金井とは似ていないが、あと5年もすれば、男の子がハエのように群がってくるに違いない。それほどの美少女になることが約束されている顔立ちだ。肩より10センチ以上長い黒髪を、背中で虹色の髪留めでまとめている。誰の趣味なのかわ分からないが、なかなか趣のある髪留めだ。
「えっと、帰ろうか」
大道寺は軽い口調で心愛に声を掛ける。どういう付き合い方をしているのかは分からないが、とりあえず右手を差し出す。すると、心愛はその手をジッと見詰めた後で、顔を上げて首を傾げた。
「誰ですか?」
屈託のない瞳が大道寺を捉えた。
その瞬間、大道寺は悟った。理由は分からないが、心愛の目は小金井の中にいる自分を見詰めていると。ここで嘘を吐いてはいけないと、第六感が警鐘を鳴らす。その直感に大道寺は従うことに決めた。
「お兄ちゃんの友達。どうしてかは分からないけど、中身が入れ替わってるんだよ」
我ながら何を言っているのか分からない。隣にいる先生も苦笑いしている。それでも、心愛は大道寺を見上げて質問する。
「お兄ちゃん、帰ってくるよね?」
真剣な表情の心愛に大道寺は笑顔で答える。
「もちろん」
「分かった」
心愛は大道寺が差し出した手を握り締めると、先生に向かって手を振った。
「先生、さよなら」
大道寺も頭を下げると、心愛の手をしっかりと握って小金井の自宅に帰る。隣で心愛がよく分からない曲を歌っているが、おそらく幼児向けアニメの主題歌なのだろう。時々キャラクターの名前が登場している。
それにしても、なぜ心愛には入れ替わっていることが分かったのだろうか。後で小金井にこのことを連絡し、直接話しをしてもらった方が良いだろう。そうすれば安心させることができるし、何かと協力してもらえるかも知れない。
小金井の自宅は一般的な戸建て住宅だった。車庫は2台分あるものの空いた状態で、両親とも働きに行っていることが分かる。そもそも、小金井が心愛を迎えに行っている時点で分かっていたことではある。門を開けると心愛が手を放して玄関のドアの前に立った。大道寺は持っていたカバンの中を漁り、自宅のキーを発見して鍵を開ける。玄関に駆け込むと同時に、心愛の声が響き渡った。
「ただいまあ」



