「あれ~?橘田先輩、寝不足ッスか?」
冬のオフィスは暖房ついてんのかってくらい寒い。まあ真夏の地獄よりはましだけど。
昼休み。瞼を擦る俺に話しかけてきたのは、後輩の好見(よしみ)だ。
「いや、二日酔い……」
「先輩飲みすぎ~!なに?キャバとか?」
「そういう所は興味無い」
「ああ~すいません!先輩Virtualアイドルとしか会話出来ないっすよね~!」
「好見、うるさい」
「推しの耐久配信見守ってたら朝になっちゃった的な?てか、先輩の推しって誰っすか?教えてくださいよ~!」
好見が俺のデスクに近寄ってがくがくと頭を揺すられる。
この陽キャ、馬鹿力過ぎるだろ。
「言ったってお前分かんないだろ」
「うわー出た出た古参ヅラ!俺が育てた的な?良いじゃないっすか!俺も生放送見ますから!布教して下さいよ~」
死ぬほど面倒臭い。
でも、確かに色々な人に知ってもらうのは悪い事じゃない。コイツ拡散力ありそうだし。
『明日も23時から配信するから会いに来てねっ!ずっとずーっと、待ってるからね!』
ぱっと思い浮かんだのはアイリンの顔。
アイリンを見つけてから一週間。アイリンは休まずライブ配信をしていて、気が付けば俺はそれを毎日視聴していた。
毎日23時から24時までの1時間限定。アーカイブも残らないその配信は、始まりから終わりまですっと同接1人。つまり俺だけ。
さすがにもっと同接欲しいよな。ファンももっと増やしたいだろうし……。
「……ハア」
俺はスマホを取り出して、アイリンのチャンネルのURLを好見とのメッセージチャットに送った。
≫坂上アイリン
URL https://virtual1196/zyuutoissyo/irene810-official.com
「それだから。言ったからにはちゃんと見ろよ」
「おおー!あざっす!いやもうマジで見るんで!チャンネル登録もしちゃうんで!……へえ~、なんかリアルに居そうな子っすね。黒髪清楚系?」
好見はさっそくメッセージチャットを見て、URLと一緒に表示されたアイリンのアイコンを見ながらニヤつく。
「……別に良いだろ」
「配信何時頃っすか?頻度は?」
「23時から24時まで。まだ出会って一週間くらいだけど……毎日配信してる。今日もやるはずだ」
「案外遅い時間にやってんすね。先輩、毎日通ってんすか~?」
「……そうだけど」
「すげー!俺、明日休みだから今日見るっす!任して下さいよ!」
「ああ、よろしく」
それだけ言って自分のデスクに向き直る。
自分の推しをオープンにするのはちょっと気恥ずかしい。でも、コイツ拡散力ありそうだしな……。
「……」
俺はこめかみをグッと押さえる。
そんなに寝酒をあおったつもりは無いが、最近どことなく身体が重い。
俺は手元のコーヒー缶をぐっとあおると、仕事の資料がまとまったファイルをクリックした。
◇
■2026.12.19 22:10~ 橘田と好見のメッセージチャット。
≫あの、先輩。
≫このURL無効ですよ。アクセス出来ないっす。
≫坂上アイリンって動画サイト内で検索したけど、転載ばっかで本人らしいの無いし。
≫先輩?もう寝ちゃったんすか?
≫……先輩。今、何の配信見てるんすか?
冬のオフィスは暖房ついてんのかってくらい寒い。まあ真夏の地獄よりはましだけど。
昼休み。瞼を擦る俺に話しかけてきたのは、後輩の好見(よしみ)だ。
「いや、二日酔い……」
「先輩飲みすぎ~!なに?キャバとか?」
「そういう所は興味無い」
「ああ~すいません!先輩Virtualアイドルとしか会話出来ないっすよね~!」
「好見、うるさい」
「推しの耐久配信見守ってたら朝になっちゃった的な?てか、先輩の推しって誰っすか?教えてくださいよ~!」
好見が俺のデスクに近寄ってがくがくと頭を揺すられる。
この陽キャ、馬鹿力過ぎるだろ。
「言ったってお前分かんないだろ」
「うわー出た出た古参ヅラ!俺が育てた的な?良いじゃないっすか!俺も生放送見ますから!布教して下さいよ~」
死ぬほど面倒臭い。
でも、確かに色々な人に知ってもらうのは悪い事じゃない。コイツ拡散力ありそうだし。
『明日も23時から配信するから会いに来てねっ!ずっとずーっと、待ってるからね!』
ぱっと思い浮かんだのはアイリンの顔。
アイリンを見つけてから一週間。アイリンは休まずライブ配信をしていて、気が付けば俺はそれを毎日視聴していた。
毎日23時から24時までの1時間限定。アーカイブも残らないその配信は、始まりから終わりまですっと同接1人。つまり俺だけ。
さすがにもっと同接欲しいよな。ファンももっと増やしたいだろうし……。
「……ハア」
俺はスマホを取り出して、アイリンのチャンネルのURLを好見とのメッセージチャットに送った。
≫坂上アイリン
URL https://virtual1196/zyuutoissyo/irene810-official.com
「それだから。言ったからにはちゃんと見ろよ」
「おおー!あざっす!いやもうマジで見るんで!チャンネル登録もしちゃうんで!……へえ~、なんかリアルに居そうな子っすね。黒髪清楚系?」
好見はさっそくメッセージチャットを見て、URLと一緒に表示されたアイリンのアイコンを見ながらニヤつく。
「……別に良いだろ」
「配信何時頃っすか?頻度は?」
「23時から24時まで。まだ出会って一週間くらいだけど……毎日配信してる。今日もやるはずだ」
「案外遅い時間にやってんすね。先輩、毎日通ってんすか~?」
「……そうだけど」
「すげー!俺、明日休みだから今日見るっす!任して下さいよ!」
「ああ、よろしく」
それだけ言って自分のデスクに向き直る。
自分の推しをオープンにするのはちょっと気恥ずかしい。でも、コイツ拡散力ありそうだしな……。
「……」
俺はこめかみをグッと押さえる。
そんなに寝酒をあおったつもりは無いが、最近どことなく身体が重い。
俺は手元のコーヒー缶をぐっとあおると、仕事の資料がまとまったファイルをクリックした。
◇
■2026.12.19 22:10~ 橘田と好見のメッセージチャット。
≫あの、先輩。
≫このURL無効ですよ。アクセス出来ないっす。
≫坂上アイリンって動画サイト内で検索したけど、転載ばっかで本人らしいの無いし。
≫先輩?もう寝ちゃったんすか?
≫……先輩。今、何の配信見てるんすか?



