SNSを今は見る気になれず、帰宅してぼんやりと思考に耽る。
母がそう考えていたとは、正直思わなかった。
勝手に決められて怒りが湧く、というよりも、形容しがたい感情が渦巻いていた。
ぐるぐると考えてしまい、自分では自分の感情に答えを出せないと思って、スマートフォンを見る。
「2本目の動画、上げてみよう」
視聴者はほとんどいないけれど、動画で独り言のように話し始めたら何かが見えるかもしれない。
スマートフォンを操作し、ボイスレコーダーを起動した。
「皆さん、こんにちは。皆さんと言っても、見る人はあまりいないですね」
苦笑し、スマートフォンを持ったまま窓の方に歩み寄る。
窓の外を見れば、心地いい陽光と、深緑の木々が風に揺らいでいるのが見えた。
「俺は、子供のころから、両親はいても、家族だと思ったことはあまりありませんでした。両親はいつも忙しく働いていて、俺が泣いていようと、苦しんでいようと、寄り添ってくれることがなかったからです」
言葉を切り、一つ深呼吸をする。
目を閉じれば、いつも一人きりでいる自分が浮かんだ。
家でも、学校でも。
「だから、人との接し方が分からなかったのかもしれません。学校でも友達が作れず、いつも一人でした。今だって、結局のところ、孤独に耐えられずに学校に行かなくなったのかもしれないな、と思いました」
話しているうちに、感情が高ぶってくるのを手のひらを握り締めて抑え込んだ。
「そんな中で、俺はSNSに出会いました。SNSは、現実と違ってとても気が楽でした。心無い言葉を発する人はもちろんいるけれど、反対に、とても優しい言葉をかけてくれる人もたくさんいて、友達もできました。SNSとはいっても、人生で初めて友達ができた時は飛び上がるくらい嬉しかったです」
秋晴と初めてやり取りをした時のことが脳裏に浮かび、口元に笑みが浮かぶ。
唇を湿らせ、ゆっくりと続きを口にした。
「でも、母にはそんな俺の状況なんて、全く関係なかったのでしょう。実は先ほど、母が勝手に家庭教師を俺につけようとしていることを知りました。俺を学校に行かせるために」
どう続ければいいか分からず、口を噤み、目を閉じる。
「上手く言えませんが、俺はすごく、もやもやした気持ちになりました。母に対して怒りとかはないんですが、すごく、すごく、どうしたらいいのか分からなくて……。これを見てくれる人がいたら、助言というか、何かコメントを下さい。そこに答えがあるかもしれないので。お待ちしています」
ボイスレコーダーを止め、机に向かい、ホームページにアップした。
friendsに一言とリンクを載せれば、少しだけ肩の荷が下りた気がした。

