今までは、こういう時はどうするべきかいろんな人に相談したくなっただろう。
だけど今は、誰の意見も聞かず、ただ、自分と矢島、宇宙に向き合おうと思った。
矢島に対して誠意を持って接することで、俺は自分の気持ちに区切りをつけられるかもしれない。
そんな予感がしていた。
それがたとえ、歪な提案がきっかけだったとしても。
「まず、鷺澤さんにとっての宇宙さんを聞かせて下さい」
朝一番に、矢島からそのメッセージが届いていた。
俺は矢島が目の前にいないこともあって、躊躇いをかなぐり捨てて伝えることにした。
「俺がSNS上で悩み事を呟くと、いつも丁寧に言葉をくれました。毎回、的確なアドバイスをくれて、だから、俺は前に進むことができたんです。宇宙さんの言葉は、俺に生きる力をくれました」
「……つまり、いつも鷺澤さんに真摯に向き合ってくれたんですね。そこに下心があるとは思わなかったんですか?」
意外な言葉に、俺が返信をどうするか考えていると、続けてメッセージが来た。
「宇宙さんは、鷺澤さんに可愛い、と伝えたんですよね。そんなにするっと誉め言葉が出るということは、鷺澤さんが気づかなかっただけで、宇宙さんは最初から鷺澤さんを意識していた。そうは思えませんか」
「あ……」
そうか、そうだったんだ。
でもそうすると、俺の初めて上げたボイスメッセージの時からということになる。
あのメッセージで、なんでそこまで気持ちが生まれたんだろうか。
いや、でもそもそも、俺が向こうに好意を抱くのはともかく、なぜ。
「そうかも、しれません。でも、なんで俺が好かれたのか、今思うと分かりません」
俺が返信を送ると、間を置かずに矢島から送られてきた。
「宇宙さんは、まず最初に、鷺澤さんにメッセージを送ったきっかけは何だったんですか」
「俺のボイスメッセージを聞いてからです」
「となると、答えは簡単です。鷺澤さんの声と、話し方に惹かれて、そこから人柄を思い描いていて、いざメッセージを送ったところ、想像通りか、それ以上だったからそんな誉め言葉が出た。そうは思えませんか」
「そう、かもしれません」
返信を送りながら、俺は奇妙な既視感を覚えていた。
なんで、こんなに的確に矢島は言い当てられるのだろう。
この感覚は、前にも。
思い出そうとした時、矢島から続けて返信が来たことで、頭の隅に追いやられてしまった。
「鷺澤さんは、俺が可愛いって言ったら嬉しいですか」
すぐに返すことができなかった。
嬉しくないはずはない。
こんなに、ドキドキしている。
けれど矢島が欲しい答えは、別のところにあると分かっていた。
「宇宙さんと比べたらって意味ですか」
矢島からの返信が束の間、途切れる。
返信は来ないだろうと思い、学校に行く支度をしようとした時、返ってきた。
「鷺澤さん、俺が前、いつか鷺澤さんに言いたいことがあると言ったのを覚えていますか」
「はい、覚えています」
即答すれば、少しの間の後。
「それを聞いて、鷺澤さんがすぐに信じられるか、今のところ自信がありません。でも、それでも聞いて欲しいので、今言います」
その後に続けられたメッセージの意味を、俺はすぐには理解することができなかった。
「俺は宇宙です」
「……それは、宇宙さんと思って欲しいって意味ですよね。矢島さん、そう言ってましたし」
「信じられませんか」
「信じられません。だって、矢島さんはずっと、別の存在として宇宙さんのことを語っていましたし、今さらそう言われても、そう思って欲しいだけだと思います」
矢島の言葉の数々を振り返り、俺は自分の心に生じた違和感は、単に矢島が嘘をついているからだと思った。
矢島を幻滅しかけたが、思い止まる。
俺の態度も良くなかった。
矢島だけを責める権利はない。
「分かりました」
矢島のそれだけのメッセージが、やけに冷たく、胸に突き刺さるようだった。
だけど今は、誰の意見も聞かず、ただ、自分と矢島、宇宙に向き合おうと思った。
矢島に対して誠意を持って接することで、俺は自分の気持ちに区切りをつけられるかもしれない。
そんな予感がしていた。
それがたとえ、歪な提案がきっかけだったとしても。
「まず、鷺澤さんにとっての宇宙さんを聞かせて下さい」
朝一番に、矢島からそのメッセージが届いていた。
俺は矢島が目の前にいないこともあって、躊躇いをかなぐり捨てて伝えることにした。
「俺がSNS上で悩み事を呟くと、いつも丁寧に言葉をくれました。毎回、的確なアドバイスをくれて、だから、俺は前に進むことができたんです。宇宙さんの言葉は、俺に生きる力をくれました」
「……つまり、いつも鷺澤さんに真摯に向き合ってくれたんですね。そこに下心があるとは思わなかったんですか?」
意外な言葉に、俺が返信をどうするか考えていると、続けてメッセージが来た。
「宇宙さんは、鷺澤さんに可愛い、と伝えたんですよね。そんなにするっと誉め言葉が出るということは、鷺澤さんが気づかなかっただけで、宇宙さんは最初から鷺澤さんを意識していた。そうは思えませんか」
「あ……」
そうか、そうだったんだ。
でもそうすると、俺の初めて上げたボイスメッセージの時からということになる。
あのメッセージで、なんでそこまで気持ちが生まれたんだろうか。
いや、でもそもそも、俺が向こうに好意を抱くのはともかく、なぜ。
「そうかも、しれません。でも、なんで俺が好かれたのか、今思うと分かりません」
俺が返信を送ると、間を置かずに矢島から送られてきた。
「宇宙さんは、まず最初に、鷺澤さんにメッセージを送ったきっかけは何だったんですか」
「俺のボイスメッセージを聞いてからです」
「となると、答えは簡単です。鷺澤さんの声と、話し方に惹かれて、そこから人柄を思い描いていて、いざメッセージを送ったところ、想像通りか、それ以上だったからそんな誉め言葉が出た。そうは思えませんか」
「そう、かもしれません」
返信を送りながら、俺は奇妙な既視感を覚えていた。
なんで、こんなに的確に矢島は言い当てられるのだろう。
この感覚は、前にも。
思い出そうとした時、矢島から続けて返信が来たことで、頭の隅に追いやられてしまった。
「鷺澤さんは、俺が可愛いって言ったら嬉しいですか」
すぐに返すことができなかった。
嬉しくないはずはない。
こんなに、ドキドキしている。
けれど矢島が欲しい答えは、別のところにあると分かっていた。
「宇宙さんと比べたらって意味ですか」
矢島からの返信が束の間、途切れる。
返信は来ないだろうと思い、学校に行く支度をしようとした時、返ってきた。
「鷺澤さん、俺が前、いつか鷺澤さんに言いたいことがあると言ったのを覚えていますか」
「はい、覚えています」
即答すれば、少しの間の後。
「それを聞いて、鷺澤さんがすぐに信じられるか、今のところ自信がありません。でも、それでも聞いて欲しいので、今言います」
その後に続けられたメッセージの意味を、俺はすぐには理解することができなかった。
「俺は宇宙です」
「……それは、宇宙さんと思って欲しいって意味ですよね。矢島さん、そう言ってましたし」
「信じられませんか」
「信じられません。だって、矢島さんはずっと、別の存在として宇宙さんのことを語っていましたし、今さらそう言われても、そう思って欲しいだけだと思います」
矢島の言葉の数々を振り返り、俺は自分の心に生じた違和感は、単に矢島が嘘をついているからだと思った。
矢島を幻滅しかけたが、思い止まる。
俺の態度も良くなかった。
矢島だけを責める権利はない。
「分かりました」
矢島のそれだけのメッセージが、やけに冷たく、胸に突き刺さるようだった。

