あなただけが教えてくれた

「……と、いうことがあったんです。宇宙さんは、どう思いますか?」
 矢島が帰った後、まだ返信が来ていなかったが、続けてメッセージを送った。
 するとすぐに、宇宙が文字を打とうとしているマークが表れた。
 返信を送らなかったのは、たまたま既読をつけて、そのまま返すのを忘れていたのかもしれない。
「俺は、その人は……」
 宇宙が、珍しく歯切れ悪く言い淀んでいるようなメッセージを送って来た。
 途中で間違えて送ったのかと思ったが、何かを打とうとしたままずっと止まっている。
「どうしたんですか?」
「その人の話が最近多いので、なんだか妬けてしまいました」
 予想外のメッセージに、ドキリとした。
 妬けた……?
 妬けたって、何だっけ。どういう意味だったっけ。
 思考が停止してしまい、上手く意味と結びつけられない。
 心臓が妙に騒いで、落ち着かない。
「それって、どういう意味ですか?」
 送ってしまった後に後悔した。
 容易く聞いてはいけない気がした。
 すると、宇宙も困ったように何か打とうとして止まっている。
 一言謝った方がいいのか、それも違うか、と悩むうちに返信が来た。
「今のは、見なかったことにして下さい」
 さっと自分の体温が下がったような気がした。
 いよいよ何も返せずに、俺は頭を抱えた。
 また動画で意見を求めようとしたが、それだと宇宙に見られて、もっと気まずくなるだろう。
 そこで思いついたのが、もう一つサブのホームページを作り、そこで意見を募集するというものだ。
 friendsにリンクは貼らないし、いつ意見がもらえるのかも分からない。そもそも何も来ない可能性が高い。
 それでも、ただ単に誰かに聞いて欲しかった。
「よし」
 俺はボイスレコーダーをセットし、準備を始めた。
「初めまして。今日は皆さんに、個人的な話を聞いてもらい、助言が欲しくて動画を上げました。そんなことくらい、自分で答えを出せと思われる方もいるとは思いますが、なにぶん、こんな経験は初めてなので、アドバイスや意見をもらいたくなりました」
 一度言葉を切り、ゆっくり次の台詞を吟味して口を開く。
「俺には今、とてもありがたい言葉をくれる方がいます。まるで、人生の案内人のような……いえ、そうですね。明るく、光差す方へ導いてくれるような方で、その方に出会ってから、俺は自分の人生が色づき始めた気がします。でも俺が、その人に……他の人の話をよくした結果、その人をなぜか不快な……いや、悲しい気持ちにさせたみたいでした。それがなぜか、俺には分からなくて、何と返せばいいか分からないまま、悩んでいます。俺にとってその人は……尊敬できる相手です。でも、時々……。いいえ、自分ではこの先は分からないので、この辺で話を終えます。ご意見お待ちしています」
 俺はボイスレコーダーを止め、新たにホームページを作り始めた。
 渦巻く感情の意味を、いつか知ることができるように願いをかけながら。