◯◯家の葬儀

△△セレモニーホール外にて(猿楽学と金田史子の通話録音)
※猿楽学密着ドキュメンタリー作成資料

「今度は何? 忙しいんだが」
「ノベナ編集部に知り合い、いたっけ?」
「ーーは、なんでノベナ? まさかうちで書かないつもりじゃないでしょうね!」
「コンテスト受賞の記念品、星のチャームがついてるボールペンなんだけれど。30本くらい送って欲しくて、頼める?」
「だから何で? 転売ヤーでも始める気?」
「いいかも!」
「いい訳ないだろ! 小説書け、書いてすぐ死ね」
「はは、妬かないでよ? 作家志望者へプレゼントしたい。彼、そのボールペンを仕事で使っていてさ、定年まで使えるように補充してあげたいんだ」
(金田史子氏のため息)
「彼は作家になれないと?」
「ひどいなぁ、僕はそこまで言ってない」
(猿楽学氏の笑い声)

「今どこ? C病院?」
「△△セレモニーホール」
(ドアの開閉音)
(金田史子が場所を移動する音)

「探偵さん、いい事を教えてあげようか」
「情報協力は大歓迎だ、金田編集長」
(書類を漁る音)
「蟹沢が遭遇した人身事故、列車に接触した男性はC病院で治療中。今夜あたり、危ないみたいよ」
「何処かで聞いた話だな」
「あら流石ね、そこまで調べられたの? うちの部下がC病院のナースと合コンして掴んだネタだぞ」
※C病院のナースとの飲食代を経費で計上するが認められず

「男性の職業は?」
「新聞記事だと会社員表記のみ。ナースちゃんも知らないって。ただ、SNSで出回ってた画像を解析したらーー社章をつけているのが分かった」
(猿楽氏の携帯電話から受信音)
「あんたが今しがた聞き込みしてた△△セレモニーの社章よ」
(約2分間沈黙)
「うーん、出来すぎたシナリオは趣味じゃないんだが」
「じゃあ大先生はどう展開する? あたし達、あんたを記事にする。密着ドキュメンタリーってやつよ。いつまでも上がらない原稿を指をくわえて待っていられない」
「はは、商魂逞しい。このやりとり、録音しているの?」
「それでは何か言い残したい事あればどうぞ」
(ライターの音) 
(猿楽氏の咳払い)

「君の喪服、ウエストがきつくなっていそうだ。早めに買い直した方がいい」
(書類を落とす音)
「じゃあ、あんたの葬儀で新調するから死ね! 早く死ね!」
※通話終了
※金田氏が猿楽氏に「死ね」と言うのは「死にたくなくなる呪い(まじない)」との事
追記 呪いの効果を高める為、藁人形導入を検討している模様