──男の生き方は醜悪だった。
若さゆえの過ち。若さゆえの不信。
金をドブのように捨ててまで取り繕った友情は長くは続かず。惰眠をむさぼっては現実から目を背け続ける。
父との溝は深くなるばかりで、ついには勘当まで出される始末。
家を飛び出た男は、握り締めた数枚の札であてどなく彷徨い続けた。
誰にも頼らず、誰にも頼れず。ただひたすらに。
月明かりを浴びた回数が、両の指を超えたある日の事だ。
男が見たのは、人工の彩りに灯った京の都。その景色を見て、灰色じみた自分の価値観が一新されていくのを感じた。
『──今度こそ自分らしく生きたる。その為やったら誰を利用しようが知ったことかい』
父と交わした密議もその足がかりに過ぎない。
父から与えられたのは、借りぐらしの一部屋と、化けの皮一枚だけ。
己の醜さを隠すようかけられた、野獣の呪い。
──新たな地で目を付けたのは、一人の少年。
少年は級長という役割に立ち、大きな悩みを抱えていた。付け寄る事にこれだけ適した人間は他にいない。
狙い通り、少年と関係を結んだ男は、少年と共に悩みの解決に励み、着実に事を進めていった。
全ては新たな人生を歩み出すため。所詮少年も単なる道具にしか過ぎない……はずだった。
ある日、男は気付いた。
自分が少年に絆され出しているということに。もっと笑顔が見たい。もっと心の底から触れ合いたい。
この少年と一緒ならば、このままでもいいとさえ思えた。
……だが、それも束の間の戯言でしかなかった。
男が最後に見た景色は、瞳に涙を浮かべ、恐怖の色に顔を染めた──大切な人の姿だった。
結局、男は何も変わらないまま。醜悪で暴虐で、自分都合にしか生きられない──ただの野獣。
それが……俺や。
