野獣の呪いが解けても、──愛してくれますか?


 ──半年前。あれはGW明けの登校日だった。

 教室へ到着すると既に同級生たちは定位置に着き、談笑に花を咲かせていた。

 俺──新島道希は誰の目にも映ることなくそのまま自席へと着く。
 鞄から教材を取り出して机にしまい、GW用に出された課題を少し確認すればもうやる事はない。
 後は朝のホームルームが始まるまで仮眠を取れば、またいつも通りの一日が始まる。

 そう、ここまではいつも通りだった。

 担任の朝倉が挨拶をするも、誰一人として返事を返すことはなかった。
 先ほどから教室の扉前で佇んでいる"あれ"に目が釘付けで、それどころではないのだ。

 黄緑色の全身に、黒色の瞳が付いた犬の顔。犬は衣装等は身に着けておらず、生まれたての姿をしている。少し距離があるから正確にとはいかないが、耳先を入れたら身長は2mを超えていた。

 それが何を話すでもなく、ただ立ち続けている。

(何だあれ……?!)
「えー、じゃあ早速なんですがね。皆さんに大事なお話があります」

 朝倉は視線を動かし「こっちに来ていいよ」と手招きをする。どうやら幽霊の類ではないようだ。

 近づいてくると更に圧がすごい。
 体幹が良いのか歩く動作、立ち居振る舞いには一切のブレがなく、止まったままなら置き物だと勘違いする人もいるんじゃないだろうか?

「えーはい、急な事ですが本日からクラスメイトが一人増えます。こちら転校生の狐崎秀明くんです、皆さん仲良くしてあげてくださいね」

 さすがに耳を疑った。
 クラスメイト? 転校生? いや不審者の間違いだろ。

 クラス中からも「えーっ!」と声があがり、それを皮切りに放心してた空気が一気にどよめき出す。その反応が嬉しいのか、着ぐるみが微妙に横揺れしてるのがわかった。

「じゃあ狐崎くん、自己紹介の方お願いします」

 着ぐるみが一歩前へ出ると、またクラス中が静寂に包まれる。
 皆が固唾を飲んで、その第一声を待つ。

「はじめまして〜狐崎秀明って言います〜。皆は親しみ込めてヒデちゃん呼んでね〜」