リオについてくるように言われ、俺は大人しく後ろをついていく。ご飯に行くと言っていたので、てっきり定食屋か居酒屋、お酒だけであればバーのようなところに行くのだと思っていたが、リオが今進んでいる先は所謂ネオン街と呼ばれるような場所であった。
「え、ちょ、リオ第三騎士団長! この先は……」
「リオだ」
「あ、えっと、リオさん。この先はホテルしか無いと思うのですが……」
俺は焦ってリオに敬称を付けて呼んでしまったが、それに対し即座に訂正するように求めてきた。それほど騎士団長呼びされることが嫌なのだろうか。
しかし今はそれどころではない。俺の認識ではこの先はホテルしかなく、何か食事ができるような場所は無いと記憶している。それなのにもかかわらずリオがマイペースにどんどん突き進むものだから、俺も止めずにはいられなかった。
「ココだ」
リオが立ち止まって案内してくれた場所はどこからどうみてもそういうホテルそのものだった。この世界のホテルとラブホテルの見分け方は非常に簡単だ。木造建築か石造建築かの違いだ。一応の防音を気にしてのことだろうが、魔法が存在するこの世界では木造であっても石造であっても大差はないだろう。
そして今回リオが立ち止まったホテルは石造建築だ。
「……リオさん、俺は別に同性愛に偏見などはありませんが、あまりにもいきなりではないかと、」
「何を勘違いしているかは概ね想像を付くが、出会って日の浅い者とすぐに事を運ぶような男に見えるか?」
これを言ってはリオに殴られるほど怒られそうだが、リオの顔は正直言って出会って日の浅い人とすぐに事を運ぶような男に見える。
何もこれは悪口を言いたいわけではなく、表現としては間違えたとは思っているがようは顔が整っていると言いたかったのだ。リオの顔は悠一《しんゆう》と同じ顔であり、俺が仮に同性と付き合うのであれば悠一がいいと思っていたくらいには悠一のことをかっこいいと思っていた。
遊んでいると言いたいわけではないが、同性からもかっこいいと思われる顔の持ち主はそれなりの経験があり、慣れているのではないかという偏見だ。
しかしそんなことは口が裂けても言えるわけがないため、誤魔化すように話題を切り替える。
「そんなわけ無いじゃないですか。それにしても本当にただのそういうホテルにしか見えないんですが、ここはなんですか?」
「……まぁいい。トーラスが思っているようにここはそういうホテルではあるが、そういったのは二階以上のフロアだ。一階は食事もできるバーになっている。」
納得した。つまりはラウンジのあるタイプのホテルということだ。
俺はこの世界に転生してからそういう行為をしたことがない。と、いうよりそんな時間はなかったと言えるだろう。エリースからの執着にも近いストーカーを受けること十年近く。十歳になってからはもう騎士団の候補生として訓練が始まり、そこからエスカレーター式に第一騎士団のサポート部に配属されたため、恋愛に時間を使うことがなかったのだ。
そのため知識としてはホテルの見極め方を知ってはいたが、まさかラウンジがあるタイプのホテルがこの世界にあるとは知らなかった。しかしこれでは俺が童貞であることを暴露しているようなものではないだろうか。
「……経験の無さは気にしなくてもいいと思うぞ。」
「余計なお世話です!」
俺のそのツッコミに近い反論にリオは馬鹿にするような笑いではなく、口を大きく開け目尻にシワを作るような、豪快な笑い方をしてくれた。リオはそのまま俺をエスコートするようにホテルのラウンジに案内する。
ラウンジはホテルの外観からは想像もつかないほど広々としていた。
ラウンジ内はカウンター席だけではなく、テーブル席も用意されており、リオは慣れた様子でカクテルを作っているであろうマスターに左手で合図を送ると、そのまま奥のテーブル席に腰掛けた。俺も続くように向かい側に座る。
「お連れ様がいらっしゃるのは珍しいですね」
俺とリオが席についたタイミングでマスターがチャームをテーブルに置きながら、リオに声を掛ける。チャームは二種類あり、パスタの素揚げに塩をまぶしたモノとじゃがいもの形が残っているタイプのフライドポテトだ。
この世界でもおつまみといえばの品が出てきたため、どこの世界でも美味しいは共有事項なのだと再認識する。
「こいつは第一騎士団の人間だ。今日は討伐遠征の祝杯だったが、こいつが俺とどうしてもサシで飲みたいって言うもんだから連れてきた。」
「え、リオさん! 俺そんなこと言ってないですよね?」
第三騎士団長でもあり、冷酷騎士とも呼ばれるような人がこんな冗談を言うとは思ってもいなかった。俺としては常に気を張っていなければならないような人よりかは接しやすいため正直助かるというのが本音だ。
「おやおや、仲がよろしんですね。」
「そうだな。俺たちはまだ何も食べていないからつまみだけじゃなく、食欲を満たせるものを三品ほど。それからアルコール以外の飲料はなにがある?」
「かしこまりました。アルコール以外となりますとオレンジかアップルかの二択になりますね。それ以外であれば割物用の水か炭酸水ならお出しすることは可能です。いかがでしょうか?」
それを聞いたリオは俺の方を向き、アイコンタクトを俺に送る。リオがマスターにアルコール以外の飲料を確認したのは俺が酒が苦手であると事前に伝えたからだろう。やはり冷酷騎士と呼ばれていることに違和感を覚えるし、納得がいかない。
「アップルでお願いします。」
「なら俺も同じもので。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
マスターは一礼し、カウンターの方へと戻っていった。数分後俺たちのテーブルは見た目も映える美味しそうなご飯にアップルジュースのグラスと食事用の水のグラスが置かれ、かなり豪華になった。
「美味しそうですね!」
「あぁ、ここの飯は誰かにおすすめできるほどだと俺自身も思っているよ」
そう呟きながらリオははてじめに綺麗に四等分されたピザを一枚取ると、大きな口を開けてその半分を豪快に食す。その姿が悠一《しんゆう》と同じ食べ方に思わず当時の記憶が走馬灯のように俺の脳裏を駆け巡る。
もう転生してから二十年以上も経つというのに、悠一《しんゆう》の記憶は案外すんなり思い出せることに、やはり悠一《ゆういち》とも思い出は特別なものであったのだと再認識しつつ、どこまでもリオが悠一《しんゆう》と似ていることに驚きも感じていた。
「……意外にも豪快に食べるんですね」
「人目を気にしなければならない状況であれば、その場にあった食べ方をするが今はその必要がないだけだ。お前の前でもマナーを気にした食べ方をしたほうがいいか?」
「いえ、俺は豪快に食べる人好きなんで、そのままがいいです」
そうリオに言い返すと、俺もピザを手に取り同じように豪快に口元へ運ぶ。ピザは元いた世界で食べていたモノとほとんど遜色なく、たっぷりのチーズにサラミやピーマンの輪切りが乗ったシンプルなものなのだが、チーズの量が尋常ではなく、どんなに伸ばしてもチーズが切れることがなく、まるで魔法でも使っているような感覚に陥る。
「お前はここがそういうホテルだとわかっていて俺を口説いているのか?」
「え? ……いや! そんなつもりないです!」
「そうか。お前なら抱いてやるぞ」
「………………え?」
「冗談だ。温かいうちに食え。」
「……どうして今日は俺をご飯に誘ったんですか?」
本当に冗談なのかわからないような軽い口調で俺を抱くとか言ってくるもんだから、変な声が出てしまった。すぐに冗談だと弁明していたが「お前なら」という言い方にひどく違和感を感じてしまい、どうしていいかわからず俺は話をすり替えることにした。
「トーラス、お前に興味があるだからだ」
「興味です……か?」
「お前はこの国で唯一武器や備品を周知や修復が出来る魔法を使えるらしいな。その魔法で我ら第三騎士団のモノを直してもらっているらしいな。感謝する」
「あぁ、そういうことでしたか。それが俺の仕事なので気にしないでください」
興味があると言ったもんだから、なにか別の意図があると汲んでいたがそうではなく、シンプルに修理をすることが出来る俺の魔法に興味があるという話のようだ。
上官に食事に誘われただけではなく、抱くなどと変なことを口にするもんだから少し警戒してしまっていたが、そこまで警戒をしなくてもいいのかもしれない。
「それだけではない」
「と、いいますと?」
「お前は俺に簡易ながらも、回復魔法を施したな。それに本来のサポート部の業務である属性付与を戦闘を行いながら、戦う魔物の弱点属性を戦闘中の騎士の剣に付与していたな」
「そうですね。今回俺が討伐遠征に参加することとなった要因でもありますから。でもオークキングを討伐できたのは俺の成果ではなく騎士の皆様と医療班の皆様の尽力あってこそだと思いますよ」
「……謙虚だな。それだけ戦えるのにどうしてサポート部なんかに配属されている?」
リオの口調が強い気がする。表情も心做しか怒っているようにも思える。悠一《しんゆう》が怒っているときと同じ怒り方だ。若干語気が強くなり表情が固くなる。その感覚が懐かしく思え、嫌な感じはしなかった。
「俺には剣の才能がなかったもので……。エリースさんに根気強く指導いただいたのですが、魔法だけでは騎士になることは叶いませんでした。お恥ずかしい限りです」
「お前は騎士になりたかったのか?」
「なるつもりはなかったと言われると語弊があるかもしれませんが、エリースさんには俺が一歳の頃から俺を騎士団に勧誘すべく様々なことをしていただきました。その恩を返すために出来ることが騎士になることだったのですが、それが叶わなかった今、俺に出来る魔法を使って貢献出来るのがサポート部だったという話です。すみません、対して面白い話でもなくて」
それを聞いたリオは先ほどとはうって変わりどこか怪しげに微笑んでいた。
「いや、いいことを聞いた。話を変えよう。お前は今回の遠征に参加してみたどうだった?」
そのざっくりと質問の裏には様々な思惑があるのだろうが、俺はさほど深くは考えずに自身の感じたままを離す。
「怖かった。これに尽きると思います。自分がいつ死んでもおかしくない状況が常に続く感覚に恐怖で身体が蝕まれそうでした。でもそれと同時に騎士の皆様のすごさを再認識しました。だからこそ俺に騎士は向いていなかったとこれも再認識しましたよ」
「そうか。わかった。冷める前にもっと食え」
「はい」
その後は他愛もない会話を挟みつつ、楽しい食事を堪能した。
食べ終えた後リオから「ホテルで一緒に寝ていくか?」という冗談なのか本気で言っているのかわからない提案を受け、俺はノリで「優しくしてくれるんですか?」と微笑みながら返事をした。
悠一《しんゆう》となら、そんな会話が出来ると思ったからだ。
「え、ちょ、リオ第三騎士団長! この先は……」
「リオだ」
「あ、えっと、リオさん。この先はホテルしか無いと思うのですが……」
俺は焦ってリオに敬称を付けて呼んでしまったが、それに対し即座に訂正するように求めてきた。それほど騎士団長呼びされることが嫌なのだろうか。
しかし今はそれどころではない。俺の認識ではこの先はホテルしかなく、何か食事ができるような場所は無いと記憶している。それなのにもかかわらずリオがマイペースにどんどん突き進むものだから、俺も止めずにはいられなかった。
「ココだ」
リオが立ち止まって案内してくれた場所はどこからどうみてもそういうホテルそのものだった。この世界のホテルとラブホテルの見分け方は非常に簡単だ。木造建築か石造建築かの違いだ。一応の防音を気にしてのことだろうが、魔法が存在するこの世界では木造であっても石造であっても大差はないだろう。
そして今回リオが立ち止まったホテルは石造建築だ。
「……リオさん、俺は別に同性愛に偏見などはありませんが、あまりにもいきなりではないかと、」
「何を勘違いしているかは概ね想像を付くが、出会って日の浅い者とすぐに事を運ぶような男に見えるか?」
これを言ってはリオに殴られるほど怒られそうだが、リオの顔は正直言って出会って日の浅い人とすぐに事を運ぶような男に見える。
何もこれは悪口を言いたいわけではなく、表現としては間違えたとは思っているがようは顔が整っていると言いたかったのだ。リオの顔は悠一《しんゆう》と同じ顔であり、俺が仮に同性と付き合うのであれば悠一がいいと思っていたくらいには悠一のことをかっこいいと思っていた。
遊んでいると言いたいわけではないが、同性からもかっこいいと思われる顔の持ち主はそれなりの経験があり、慣れているのではないかという偏見だ。
しかしそんなことは口が裂けても言えるわけがないため、誤魔化すように話題を切り替える。
「そんなわけ無いじゃないですか。それにしても本当にただのそういうホテルにしか見えないんですが、ここはなんですか?」
「……まぁいい。トーラスが思っているようにここはそういうホテルではあるが、そういったのは二階以上のフロアだ。一階は食事もできるバーになっている。」
納得した。つまりはラウンジのあるタイプのホテルということだ。
俺はこの世界に転生してからそういう行為をしたことがない。と、いうよりそんな時間はなかったと言えるだろう。エリースからの執着にも近いストーカーを受けること十年近く。十歳になってからはもう騎士団の候補生として訓練が始まり、そこからエスカレーター式に第一騎士団のサポート部に配属されたため、恋愛に時間を使うことがなかったのだ。
そのため知識としてはホテルの見極め方を知ってはいたが、まさかラウンジがあるタイプのホテルがこの世界にあるとは知らなかった。しかしこれでは俺が童貞であることを暴露しているようなものではないだろうか。
「……経験の無さは気にしなくてもいいと思うぞ。」
「余計なお世話です!」
俺のそのツッコミに近い反論にリオは馬鹿にするような笑いではなく、口を大きく開け目尻にシワを作るような、豪快な笑い方をしてくれた。リオはそのまま俺をエスコートするようにホテルのラウンジに案内する。
ラウンジはホテルの外観からは想像もつかないほど広々としていた。
ラウンジ内はカウンター席だけではなく、テーブル席も用意されており、リオは慣れた様子でカクテルを作っているであろうマスターに左手で合図を送ると、そのまま奥のテーブル席に腰掛けた。俺も続くように向かい側に座る。
「お連れ様がいらっしゃるのは珍しいですね」
俺とリオが席についたタイミングでマスターがチャームをテーブルに置きながら、リオに声を掛ける。チャームは二種類あり、パスタの素揚げに塩をまぶしたモノとじゃがいもの形が残っているタイプのフライドポテトだ。
この世界でもおつまみといえばの品が出てきたため、どこの世界でも美味しいは共有事項なのだと再認識する。
「こいつは第一騎士団の人間だ。今日は討伐遠征の祝杯だったが、こいつが俺とどうしてもサシで飲みたいって言うもんだから連れてきた。」
「え、リオさん! 俺そんなこと言ってないですよね?」
第三騎士団長でもあり、冷酷騎士とも呼ばれるような人がこんな冗談を言うとは思ってもいなかった。俺としては常に気を張っていなければならないような人よりかは接しやすいため正直助かるというのが本音だ。
「おやおや、仲がよろしんですね。」
「そうだな。俺たちはまだ何も食べていないからつまみだけじゃなく、食欲を満たせるものを三品ほど。それからアルコール以外の飲料はなにがある?」
「かしこまりました。アルコール以外となりますとオレンジかアップルかの二択になりますね。それ以外であれば割物用の水か炭酸水ならお出しすることは可能です。いかがでしょうか?」
それを聞いたリオは俺の方を向き、アイコンタクトを俺に送る。リオがマスターにアルコール以外の飲料を確認したのは俺が酒が苦手であると事前に伝えたからだろう。やはり冷酷騎士と呼ばれていることに違和感を覚えるし、納得がいかない。
「アップルでお願いします。」
「なら俺も同じもので。」
「かしこまりました。少々お待ちくださいませ。」
マスターは一礼し、カウンターの方へと戻っていった。数分後俺たちのテーブルは見た目も映える美味しそうなご飯にアップルジュースのグラスと食事用の水のグラスが置かれ、かなり豪華になった。
「美味しそうですね!」
「あぁ、ここの飯は誰かにおすすめできるほどだと俺自身も思っているよ」
そう呟きながらリオははてじめに綺麗に四等分されたピザを一枚取ると、大きな口を開けてその半分を豪快に食す。その姿が悠一《しんゆう》と同じ食べ方に思わず当時の記憶が走馬灯のように俺の脳裏を駆け巡る。
もう転生してから二十年以上も経つというのに、悠一《しんゆう》の記憶は案外すんなり思い出せることに、やはり悠一《ゆういち》とも思い出は特別なものであったのだと再認識しつつ、どこまでもリオが悠一《しんゆう》と似ていることに驚きも感じていた。
「……意外にも豪快に食べるんですね」
「人目を気にしなければならない状況であれば、その場にあった食べ方をするが今はその必要がないだけだ。お前の前でもマナーを気にした食べ方をしたほうがいいか?」
「いえ、俺は豪快に食べる人好きなんで、そのままがいいです」
そうリオに言い返すと、俺もピザを手に取り同じように豪快に口元へ運ぶ。ピザは元いた世界で食べていたモノとほとんど遜色なく、たっぷりのチーズにサラミやピーマンの輪切りが乗ったシンプルなものなのだが、チーズの量が尋常ではなく、どんなに伸ばしてもチーズが切れることがなく、まるで魔法でも使っているような感覚に陥る。
「お前はここがそういうホテルだとわかっていて俺を口説いているのか?」
「え? ……いや! そんなつもりないです!」
「そうか。お前なら抱いてやるぞ」
「………………え?」
「冗談だ。温かいうちに食え。」
「……どうして今日は俺をご飯に誘ったんですか?」
本当に冗談なのかわからないような軽い口調で俺を抱くとか言ってくるもんだから、変な声が出てしまった。すぐに冗談だと弁明していたが「お前なら」という言い方にひどく違和感を感じてしまい、どうしていいかわからず俺は話をすり替えることにした。
「トーラス、お前に興味があるだからだ」
「興味です……か?」
「お前はこの国で唯一武器や備品を周知や修復が出来る魔法を使えるらしいな。その魔法で我ら第三騎士団のモノを直してもらっているらしいな。感謝する」
「あぁ、そういうことでしたか。それが俺の仕事なので気にしないでください」
興味があると言ったもんだから、なにか別の意図があると汲んでいたがそうではなく、シンプルに修理をすることが出来る俺の魔法に興味があるという話のようだ。
上官に食事に誘われただけではなく、抱くなどと変なことを口にするもんだから少し警戒してしまっていたが、そこまで警戒をしなくてもいいのかもしれない。
「それだけではない」
「と、いいますと?」
「お前は俺に簡易ながらも、回復魔法を施したな。それに本来のサポート部の業務である属性付与を戦闘を行いながら、戦う魔物の弱点属性を戦闘中の騎士の剣に付与していたな」
「そうですね。今回俺が討伐遠征に参加することとなった要因でもありますから。でもオークキングを討伐できたのは俺の成果ではなく騎士の皆様と医療班の皆様の尽力あってこそだと思いますよ」
「……謙虚だな。それだけ戦えるのにどうしてサポート部なんかに配属されている?」
リオの口調が強い気がする。表情も心做しか怒っているようにも思える。悠一《しんゆう》が怒っているときと同じ怒り方だ。若干語気が強くなり表情が固くなる。その感覚が懐かしく思え、嫌な感じはしなかった。
「俺には剣の才能がなかったもので……。エリースさんに根気強く指導いただいたのですが、魔法だけでは騎士になることは叶いませんでした。お恥ずかしい限りです」
「お前は騎士になりたかったのか?」
「なるつもりはなかったと言われると語弊があるかもしれませんが、エリースさんには俺が一歳の頃から俺を騎士団に勧誘すべく様々なことをしていただきました。その恩を返すために出来ることが騎士になることだったのですが、それが叶わなかった今、俺に出来る魔法を使って貢献出来るのがサポート部だったという話です。すみません、対して面白い話でもなくて」
それを聞いたリオは先ほどとはうって変わりどこか怪しげに微笑んでいた。
「いや、いいことを聞いた。話を変えよう。お前は今回の遠征に参加してみたどうだった?」
そのざっくりと質問の裏には様々な思惑があるのだろうが、俺はさほど深くは考えずに自身の感じたままを離す。
「怖かった。これに尽きると思います。自分がいつ死んでもおかしくない状況が常に続く感覚に恐怖で身体が蝕まれそうでした。でもそれと同時に騎士の皆様のすごさを再認識しました。だからこそ俺に騎士は向いていなかったとこれも再認識しましたよ」
「そうか。わかった。冷める前にもっと食え」
「はい」
その後は他愛もない会話を挟みつつ、楽しい食事を堪能した。
食べ終えた後リオから「ホテルで一緒に寝ていくか?」という冗談なのか本気で言っているのかわからない提案を受け、俺はノリで「優しくしてくれるんですか?」と微笑みながら返事をした。
悠一《しんゆう》となら、そんな会話が出来ると思ったからだ。



