周りがパラパラと集団になりつつある中、俺は変わらずぼっちだった。
誰に警戒されているわけではないだろうが、なんか急にやる気を失ってしまった。
ひとりで風呂準備を始めることで、気持ちを静めようとしたが、それもうまく行かず、荷物を出して、戻してを繰り返してしまっていた。
俺にさんざん絡んでいた米野は、さっさと風呂場に行った。
なんかそんなアイツと鉢合わせしたくなくて、時間をずらそうとしたけれど、先発隊が続々と戻ってくるのだから、さすがに自分も行かないとならなかったので、しぶしぶ、俺も大浴場に向かった。
少し遅れてしまったためか、脱衣所にはほとんど誰もいなかった。これ幸いと、俺は一番荷物の置かれていない角に、自分の荷物を起き、服を脱ぎ始めた。
どんよりとした気持ちのせいか、若干この脱衣所の角は暗いなと思い始めたときだった。
「誰か、いるか」
「おわ……っ」
真後ろから聞こえた声。ホラーな瞬間と思いきや、そこには人間が経っていた。
「い、がらし」
そこに立っていたのは、風呂上がりの五十嵐だった。
風呂上がりの姿を見てしまい、慌てて目をそらしたが、自分の体格とのあまりの違いに、動揺してそれどころではない。
さきほど米野に聞いた言葉が蘇る。努力の賜物と、それなりにそのままの自分。なにもかもが、違っている五十嵐と鉢合わせてしまった。
下着は付いている。だから俺は、たぶん肌色の部分はなにも見ていない。
見る気もないけれど、なんとなく、気恥ずかしくて目を逸らした。
が、五十嵐のほうは、なんだか違っていた。
ぐい、と引き寄せられた腕。するりと彼の胸板に収まってしまい、困惑した。
「悪い、見えてない。誰だ」
「え」
「……眼鏡ないと無理だから、その、クラスメイトの誰かだろうというのはわかるんだが」
五十嵐は冗談を言っているような雰囲気ではなかった。
しかし、この状態はいただけない。さっき、米野に詰められたばかりではないか。
「う、宇田だけど」
「そ、うか……」
ぐっと抱きしめられている気もするけれど、違う。そういうのじゃない。
慌てて体を離そうとするが、案外強情な五十嵐は、俺を解放してくれない。
「ちょ……、おまえどうしたんだよ」
「眼鏡」
「はあ?」
「大浴場に忘れた」
だからどうにもできない。五十嵐は湿った肌を俺に押し付けて言うが、いまいち、よくわかっていない。
「おまえ、そんなに目、悪かったのかよ」
「今、お前の表情が認識できないくらいには」
「……信じらんねえ」
ぴく、と五十嵐のでかい体が震えた気がした。いや、拒否したわけじゃない。ただ、自分の言動への反応があまりにも大きくて、とても、変な気分になった。
「けど、わかった。えっと、よく付けてる黒縁? あれであってるか」
「ああ」
「えーっと、じゃあ風呂んときに忘れたっていうよりも、置いたけど見つからなかった……ってことか」
「おそらく……大浴場のほうで、汗を拭くのに外して、そのあと人について戻ったんだが、慌ててた」
いつも背筋をぴんと張って、鼓舞しているような体躯が、小さく丸まっているのは、なんとなく居心地が悪かった。
どうせなら堂々としてもらわないと。
どこかで普段見せる顔とちがい雰囲気を醸し出す空間に自分がいないこと。そんなちっぽけなんの役割も与えられていない俺が、なんだかいやだとそのとき思ったのだった。
誰に警戒されているわけではないだろうが、なんか急にやる気を失ってしまった。
ひとりで風呂準備を始めることで、気持ちを静めようとしたが、それもうまく行かず、荷物を出して、戻してを繰り返してしまっていた。
俺にさんざん絡んでいた米野は、さっさと風呂場に行った。
なんかそんなアイツと鉢合わせしたくなくて、時間をずらそうとしたけれど、先発隊が続々と戻ってくるのだから、さすがに自分も行かないとならなかったので、しぶしぶ、俺も大浴場に向かった。
少し遅れてしまったためか、脱衣所にはほとんど誰もいなかった。これ幸いと、俺は一番荷物の置かれていない角に、自分の荷物を起き、服を脱ぎ始めた。
どんよりとした気持ちのせいか、若干この脱衣所の角は暗いなと思い始めたときだった。
「誰か、いるか」
「おわ……っ」
真後ろから聞こえた声。ホラーな瞬間と思いきや、そこには人間が経っていた。
「い、がらし」
そこに立っていたのは、風呂上がりの五十嵐だった。
風呂上がりの姿を見てしまい、慌てて目をそらしたが、自分の体格とのあまりの違いに、動揺してそれどころではない。
さきほど米野に聞いた言葉が蘇る。努力の賜物と、それなりにそのままの自分。なにもかもが、違っている五十嵐と鉢合わせてしまった。
下着は付いている。だから俺は、たぶん肌色の部分はなにも見ていない。
見る気もないけれど、なんとなく、気恥ずかしくて目を逸らした。
が、五十嵐のほうは、なんだか違っていた。
ぐい、と引き寄せられた腕。するりと彼の胸板に収まってしまい、困惑した。
「悪い、見えてない。誰だ」
「え」
「……眼鏡ないと無理だから、その、クラスメイトの誰かだろうというのはわかるんだが」
五十嵐は冗談を言っているような雰囲気ではなかった。
しかし、この状態はいただけない。さっき、米野に詰められたばかりではないか。
「う、宇田だけど」
「そ、うか……」
ぐっと抱きしめられている気もするけれど、違う。そういうのじゃない。
慌てて体を離そうとするが、案外強情な五十嵐は、俺を解放してくれない。
「ちょ……、おまえどうしたんだよ」
「眼鏡」
「はあ?」
「大浴場に忘れた」
だからどうにもできない。五十嵐は湿った肌を俺に押し付けて言うが、いまいち、よくわかっていない。
「おまえ、そんなに目、悪かったのかよ」
「今、お前の表情が認識できないくらいには」
「……信じらんねえ」
ぴく、と五十嵐のでかい体が震えた気がした。いや、拒否したわけじゃない。ただ、自分の言動への反応があまりにも大きくて、とても、変な気分になった。
「けど、わかった。えっと、よく付けてる黒縁? あれであってるか」
「ああ」
「えーっと、じゃあ風呂んときに忘れたっていうよりも、置いたけど見つからなかった……ってことか」
「おそらく……大浴場のほうで、汗を拭くのに外して、そのあと人について戻ったんだが、慌ててた」
いつも背筋をぴんと張って、鼓舞しているような体躯が、小さく丸まっているのは、なんとなく居心地が悪かった。
どうせなら堂々としてもらわないと。
どこかで普段見せる顔とちがい雰囲気を醸し出す空間に自分がいないこと。そんなちっぽけなんの役割も与えられていない俺が、なんだかいやだとそのとき思ったのだった。

