ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています


 旅先のレク、もとい、自由行動その一。
 班ごとのスタンプラリー、兼観光、兼地歴の勉強。放り出された大きい寺社には愛着なんてあったこともない。

 「ようこそ」なんてクラスの全体写真を撮ったところで、一時解散の号令が出た。
 俺は、予定されていた班に合流した。

「宇田も来たか!」
「じゃあ、これからどうしよかー」
「一番近いところから攻めるよりも、距離かかりそうなとこから行くべきじゃないか?」

 合流するなり、この先の旅程を決めるのだから、うちの学校が相当ゆるいんだろうなとは思う。一応の信頼なのか、なんなのか。正直、どうでもいいことは考えないので知る気もない。

 即席班のため、だいたいが好き勝手に行程を決めて、ギスギスしながら一夜を過ごすんだという噂を耳にしたことがあったが、まさしくそうなりそうな気配を、俺も感じていた。

 四人がけの席に座る三人が、口々に自分の主張を発言していく。

「でもバスは東寄りに停まってんだろ? なら手前から無難に行くべきじゃね?」
「うーん、でも明らかにこの距離、大通りじゃない分、時間かかりそうだし……」
「じゃあ、間を取って真ん中から」
「「それはない」」
「マジかよ……決まらねぇのか?」

 俺は正直、そこまでこのレク自体、本気で考えていなかった。ので、できればこういう面倒なことは避けて通りたいと思っていたのだが、どうやらこの三人組はお人好しの集まりらしい。

 基本の班行動のルールは簡単だ。目的のスポットを自由に回る、ということで、観光用の一日乗車券と連絡用のスマホを与えられた各班が、好きなように楽しむこと。と。ただし、明らかに遊んでいる形跡がある場合は、夜を待たずして強制退去なのだとか。

 紙の地図を広げてウンウン唸っているやつらをフォローしたほうがいいのかもしれないが、正直何が正解かもわからないところが多い。

 というのも、この班はバスの中で開催されたくじ引きに寄って雑に仕分けられた五人だ。

 しかも、寝てた俺を起こすのもとかなんとかで、俺と五十嵐は同じ班になったらしい。さすがに起こせよ、とも思ったが、起きたところで希望なんてなかったからその時間のダラダラした空気を浴びなくて済んだと思えばそれまでか。

 俺が顔と名前を一致させているのは、五十嵐くらいで、他のメンバー三人が仲良しだったせいか、俺たちの出る幕はない。

 そう思っていたのに。

「なあ、五十嵐。おまえはどう思う?」
「そうだな」

 次の言葉で、だいたい決まるだろう。こらえていたあくびをかみ殺していた自分は、我関せずとぼーっとしていたのだが。

「宇田将也。おまえはどうだ」
「……へ?」
「どう行くべきだと思う」

 すん、と言い放ったのは、質問を受けていたはずの五十嵐だ。必然的に、五十嵐以外の視線もこちらに集中する。
 受けた質問をそのまま他人にぶん投げるのはどうかしていると思う。

「はあ?」
「宇田、なんかいい案あるのか?」
「いっそおまえに頼む」
「どうせ俺たちじゃ決められそうにないし。もうこの際、五十嵐のご指名だし」
「ええ……」

 俺は、しばし諮詢する。

 ここで時間を使い過ぎて、ゆっくり回れなかった、とか言われるのもいやだし、かといって、フルコン目指しているような奴らだったら、こんなに適当を言ってくるわけもないだろう。

 いろいろ考えて、自分が一番楽ができそうなルートを提案することにした。

「じゃあ、ここ。この手前のポイントから、神社とか先回って、最後にホテル前のここ。大通りって、車多いだろ? だったら小さい道歩いて攻めたらいいと思うんだよな」
「なるほど」
「宇田将也の案でいいと思う」
「俺も!」
「よし、じゃあ行こー!」

 しれっと同意した五十嵐のおかげで、俺の案で成立することになった。
 なんでだよ。責任持てないっていうのに、ほか三人がわいわいと盛り上がっていて、細かいルートを決めてくれた。

「じゃあ、宇田。道案内頼む」
「え、ああ」
「とりあえず、最初は門前のあそこだよな」
「いや、反対じゃないか? 五十嵐が、ほら、」
「え、アイツ早」

 気付かないうちに、サクサク進んでいたらしい五十嵐が、じっとこちらを見ている。
 いや、俺を見ているのか。

「と、とりあえず行くぞ!」

 俺の声を聞いて、グループ全体で移動した。和気あいあいな三人と、空気な俺と五十嵐。やっとほっとできた、と思った。