ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています

 自分のような後ろでこそこそするようなタイプで、学校祭の出店をする側に回るなんて思ってもみなかった。
 しかも、よりにもよって米野と組むことになってしまった。

 苦手だから、正直関わりたくなかったのに、米野はぐいぐいと俺に詰め寄ってきた。

「あれ、将也くん」
「おう……」
「なんだよー、もうちょい仲良くしてくれないと、後々困るんだけど」
「いや、でも」
「シカトとかやめてよね? ちゃんとクラスに協力したいんだから」
「あ、うん、わかってるよ……」

 逃げ切れるかと思ったのに、自分の世界に閉じこもらないように、ちゃんと言い含められてしまった。

「で、さあ」

 気怠げに絡んで来ることに慣れたわけじゃない。だが反応しないと、それはそれで面倒くさい。いや、いいんだけど。別に悪意とかはなさそうだし、と軽くいなそうと思っていたが、どうにもかみ合わない。

「いつになったら、五十嵐くんの隣から離れるわけ?」
「はあ?」
「……単推しって言ったら、普通にわかるじゃん。なにそれ、煽り?」
「いや待ってなにそれ」

 米野のコレにはもう飽き飽きだ。自分の世界が大正解で、誰の意見も求めていない気がする。それ自体は構わないけれど、なんか構わないと面倒なことになりそうな気がする。

「五十嵐くんは、真面目で優等生で孤高で、一人がよくて」
「いやちょっと待って」

 誰の話を言っているのか。五十嵐はそういうことを、言っていたことはなかったはずだ。
 あえて他者を避けているわけじゃない。真面目なのは性分だし、キャラとしてはただの末っ子甘やかされなうえ、言われたことを純粋に続けてしまう根っからのいい奴。

「五十嵐、そんな奴じゃないけど」

 だから米野の言葉には同意しかねる、と思わず口を挟んでしまった。

「はあ? 五十嵐くんの何がわかるんだよ」
「え、なに……そっくりそのまま返すけど」

 気持ちよく話していたところに、俺の発言で米野はめちゃくちゃむかついたらしい。
 苛立ちを隠しもせずに、ずいと一歩分、体を近づけてきた。

「……あー、でもあれだ。アイツのこと、言う気もねーわ」
「は?」
「一応、個人情報なので、本人がいないところでは開示しませーん」
「……ああ?」

 煽り方が米野に似てしまって、なんかヤだなぁとか思いつつ、事実、なんか言いたくなかった。ムカついたのだから仕方ない。そう思うことにした。

「だから」
「おい」
「!」

 が、そのバチバチした空気を否定するような声が、割っても入ってきた。

「宇田将也」

 五十嵐が、なぜか俺の席にやってきていた。

「おう」
「……っ、い、五十嵐くん。あの」
「さっきの、聞こえていたが」
「っ、」

 米野はぱっと顔を上げると逃げるように自席に戻ろうとしていたが、五十嵐が立ちふさがった。
 顔が真っ赤に見えたのは、恥ずかしさなのか、苛立ちなのか、俺には判別できなかったが、たぶん俺に知られたくもないだろう。

「気にすんなよ、五十嵐。米野だって悪気あるわけじゃねーぞ」
「……俺が気にしているのは」
「いや、あの」

 見ていられなくて、俺は割って入ることにした。

「あのさ」
「っ、なに」
「……五十嵐と仲良くしてーなら、ちゃんと話せよ。ふつうにさ」
「推しに認知されたくない奴だっているんだよ、ばーか!」

 そう言うなり、米野は俺の前から立ち去っていた。いや、なんで二人きりにするんだよ。よりによって、このタイミングで。

「やっぱ俺、バカなのかな」
「いや、宇田将也はそうじゃないと思う」
「おう。さんきゅー……」

 どう返したらいいのか、考えている間に、五十嵐は去った。
 周りのクラスメイトは、やや引き気味にこちらを観察している。ヒソヒソ声は届くものの、話の内容までは理解できない。

 少なくとも、あの二人と同じ分類にされてしまったのだろうなと、俺は机に突っ伏してもろもろの対応を諦めた。