ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています

 そして放課後。

「五十嵐」
「……宇田将也、どうした」
「帰り、まだ時間あるなら、ちょっと付き合え」

 言うしかないと、一目散に帰ろうとしていた五十嵐を呼びつけた。

「……? ああ、わかった」

 なにもわかっていないような五十嵐に、少しイライラしたのは、仕方ないと思う。

 直接呼ばずとも、単純にDMを送ったってよかったと思う。たた、その場合は、そのテキストの上に、俺の寝姿の写真が掲載されていることだろう。それを再度見直す気にならなかったのが、俺が諦めた理由だ。

 五十嵐はきょとんとした顔で「珍しいな」と言った。謝罪は、なかった。

「……どういうことだよ」
「どう?」
「俺の写真、ほかのやつに送るつもりだったんだろ?」

 ずい、と五十嵐とのDM画面を見せると、みるみるうちに五十嵐の顔色が悪くなった。

「……は?」

 五十嵐は、スマホを落としそうになりながら、画面をタップして、己の履歴を確認していた。しばらくして、放心状態になった五十嵐は、顔を空に向け、じわじわ流れていく雲を追いかけているようだった。
 泣きそうな雰囲気に動揺した俺は、オロオロと、五十嵐の反応を待った。

 しかし、一向に動く気配がない。
 ゆえに俺は、わりと強硬手段で、俺は強めに呟いた。

「おい、」
「……消してくれ」
「いや、おまえのほうこそ消せよ」

 ふつうに自分の画面でどうにかなるだろ、と笑ったけれど、五十嵐はかたくなに「それは無理」と断ってくる。明らかに動揺しているのに、だ。なんでだよ。もう少しお詫び感はないのかよ、と俺もイライラしてきたけど、ぶれない五十嵐はてこでも動きそうにない。

「……おい」

 ハキハキと答える五十嵐が、言葉を紡がずに目を泳がせている。それだけ、俺の写真で、俺の話で盛り上がる相手がいたということか。
 いらいらした俺は、黙ったままの五十嵐を見て、どうにもいたたまれなくなった。

「……じゃあ、理由。それで納得する」
「……」

 五十嵐は、珍しく困っていた。
 目を忙しなく動かして、口をモゴモゴさせて。じゃあどうしたらいいんだよ、と思ったけれど、俺の言葉も亡くなったことに何か思ったらしい。
 それで、最後には諦めたように、ため息を零して、言った。

「好きだから」
「は?」
「だから俺は宇田将也を撮っていた。その画像を持っていた理由だ。それ以上はない」

 数秒の後、理解しようとした。五十嵐が、俺を、好き?
 ――好きだったら、何してもいいのかよ。
 俺の頭に最初に浮かんだ言葉は、それだ。

「いや、それでも許可とれよ。普段ちゃんとしろって言ってんだろうがよ」

 だいたい、いろんな授業とかセンセーからのお言葉、とかで言ってるだろ、と言いたかった。

「……そうだな」

 五十嵐がぽつりとそう呟くと、俺を、泣きそうな目で見て言った。

「もう、撮らない」
「え」
「それで、いいか? これだけは、消したくない」
「え、いやだから」

 ここに送られてきたものを、消してほしいだけなんだけど、と言おうとしたのだけれど、五十嵐は「この1枚だけは、残したい」と譲らない。

「……意味、わかんねぇよ」
「それでも」
「あのさ、もっとちゃんと理由こねくり回して言えよ、俺、のこと……好き、とか言うなら、俺、そういうの全然わかんねぇし」

 まるで撮られたい願望があるように聞こえたかもしれない。
 でも、一応、いろんな人にそういう見方とか趣味があるのも理解はしているし、けど、でも。
 納得できない。ああ。それだ。俺は、正直納得できていないのだ。
 一緒に話したことは、このクラスに入ってからだし、たまたま大きいイベントで同じグループになったけど、正直それが普通の仲が良い奴と、好きな奴の違いもわからない。

「……カッとなりすぎた。帰る。とにかく、消してくれよ」

 俺は、許可を出せるような大人にまだなれそうにない。なんだかよくわからないところに使いたいとか、そういうのではないんだと思う。だけど、本当に、これから、どうしたらいいんだよ。言うだけ言って、適当にするなんて五十嵐らしくない。

 五十嵐の発言に納得できないまま、俺は、彼とは違う道を通って、家に帰ったのだった。