夏も走り出して、制服も半袖になった頃。
小テストで度会に呆れられるほどの点数をたたき出した俺は、意を決して五十嵐に声をかけた。
「あ、のさ、五十嵐」
「なんだ」
放課後に入って早々、掃除当番に当たっていないことを確認して、五十嵐を呼び止めた。こんなところで、赤点を増やすわけにはいかない。そして、自分の前にいる、教科書を教科書以上にしている男。彼の言う内容を俺自身、理解できるとは思っていない。
だが、卒業までのカウントダウンがうっすら透けてきたこの時期が勝負時だということは、なんとなくわかっている。
「……期末の勉強、教えてくれないか?」
手を合わせて、俺は目をつぶって五十嵐に言った。
耳に入ってくるのは帰路につく生徒の喧噪のみ。ダメだったか。いや、それでもどうにか、しかし。
五十嵐の声は俺の耳には届いてこない。
なので俺は、目を開けて五十嵐の様子を確認することにした。
五十嵐は眉間に皺を寄せ、言いあぐねているようにも見える。このまま、流れてしまうのも、いやだと思った俺は、食い下がるように続けた。
「いや、その……なんか放課後急に予定がなくなるのも変だろうなって思ってたし、マジで授業わかんねーし。五十嵐は受験とかあると思うから気にしなくても」
「わかった」
「え」
無理なら別に気にしなくてもいい、なんて言い訳を言おうとしていたのに、五十嵐は俺の言葉を最後まで聞かずに、了承した。たぶん。
あっさりとしたイエスを受け取るまでに、俺は少々時間がかかった。
五十嵐、今、オーケーしたよな? 聞き間違いじゃないよな?
理解の及ばない俺に、五十嵐は淡々と話す。
「……ちょっと整理する。また明日」
「おおう」
五十嵐はそう言うと、俺を置いて帰ってしまった。
「で、どっちなんだよ……」
俺は五十嵐にどう思われているのか、正直よくわからなかった。
ただ、嫌われてはいないんだろうなということだけは、ちょっと、誇らしく思ったのだった。
小テストで度会に呆れられるほどの点数をたたき出した俺は、意を決して五十嵐に声をかけた。
「あ、のさ、五十嵐」
「なんだ」
放課後に入って早々、掃除当番に当たっていないことを確認して、五十嵐を呼び止めた。こんなところで、赤点を増やすわけにはいかない。そして、自分の前にいる、教科書を教科書以上にしている男。彼の言う内容を俺自身、理解できるとは思っていない。
だが、卒業までのカウントダウンがうっすら透けてきたこの時期が勝負時だということは、なんとなくわかっている。
「……期末の勉強、教えてくれないか?」
手を合わせて、俺は目をつぶって五十嵐に言った。
耳に入ってくるのは帰路につく生徒の喧噪のみ。ダメだったか。いや、それでもどうにか、しかし。
五十嵐の声は俺の耳には届いてこない。
なので俺は、目を開けて五十嵐の様子を確認することにした。
五十嵐は眉間に皺を寄せ、言いあぐねているようにも見える。このまま、流れてしまうのも、いやだと思った俺は、食い下がるように続けた。
「いや、その……なんか放課後急に予定がなくなるのも変だろうなって思ってたし、マジで授業わかんねーし。五十嵐は受験とかあると思うから気にしなくても」
「わかった」
「え」
無理なら別に気にしなくてもいい、なんて言い訳を言おうとしていたのに、五十嵐は俺の言葉を最後まで聞かずに、了承した。たぶん。
あっさりとしたイエスを受け取るまでに、俺は少々時間がかかった。
五十嵐、今、オーケーしたよな? 聞き間違いじゃないよな?
理解の及ばない俺に、五十嵐は淡々と話す。
「……ちょっと整理する。また明日」
「おおう」
五十嵐はそう言うと、俺を置いて帰ってしまった。
「で、どっちなんだよ……」
俺は五十嵐にどう思われているのか、正直よくわからなかった。
ただ、嫌われてはいないんだろうなということだけは、ちょっと、誇らしく思ったのだった。


