ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています

 昼休み前の授業が真中センセーだったから「十分だけ宮本に任せた」と教壇から降りた結果、さくさくと議題は進んで終わった。宮本も軽快に役割を果たし、結果、滞りなく昼休み前に競技が決まった。

 委員長の宮本誠太が仕切る臨時ホームルーム。議題は来月の体育祭の競技決めだった。

「じゃあ次は、バレーボール。前に出してもらったアンケートで決まりました。男子は五十嵐、宇田……」

 自分の名前が呼ばれた、と気づいたときには、もう遅かった。

「バレーはちょうど補欠込みで七人だし、これでお願いしまーすっ」
「……っ!」

 皆のまばらな拍手が教室に木霊している。

 正直、どうしようかと思っていた体育祭。うちの学校はクラス対抗。生徒は競技に何かしら出る必要があるので、俺は適当に人気そうと思った競技を選んで、補欠枠を確保するつもりだった。だって、しんどいだけの催しを、頑張る必要なんてない。去年はバスケでそうできたから、今年は別の競技で回避しようとしていた。

 なのに。俺は黒板を睨んでみるが、結果は変わらない。選ばれてしまったのは、正規メンバー。全員参加とはいえ、普通に、選ばれると思ってなかった。

 チャイムがだいぶ遠くに聞こえた、と思いながら、俺はうなだれたまま、一組に突っ込んでいった。幸い、今日は朝イチにコンビニに行けたから、購買バトルに赴く必要もない。

 なんだかよくわからないテンションだったことは、度会には一目瞭然だったらしい。

「なんつー顔」
「……どういう顔?」
「ギリギリ、ゾンビになってない人間」
「あー……マジでそういう感じ」
「なにがあったんだよ」
「体育祭。うちのクラスちゃんと全員当てるタイプだったの忘れてた」
「なんか察した。ドンマイ」

 なんの心もこもっていないドンマイで、何がなぐさめられるというのか。
 とはいえ、向かい合う男にはなんにも関係ない話だから、流されないだけマシなのだろう。

 肩を落としたままパッケージを引きちぎろうとしていた俺を見て、度会は「切り口見えてねーのかよ」と言いながら、自分の弁当を食いはじめた。

「ちなみに」
「なに」
「青木さんは女バレらしい」
「青木さん?」

 ああ、そうか。そういや女子もバレーがあったのか。
 俺は、ただそう思ったのだが、度会は目を丸くしていた。

「ふうん」
「お?」

 それ以上、反応しなかった俺を見て、度会はなにやらニヤニヤしていた。

「宇田、なんかあったのか?」
「……は?」
「いや、おまえなら普通にもっとがっついてくるかと思ってた」
「いやもう……そういう気分じゃないんだよ」

 どうしてそういうリアクションになったのかはわからないが、どうやらそれは度会の好奇心を刺激したらしい。

 俺は俺で、さきほど、自分のクラスであったやりとりを思い出し、ため息とともに
 このうだうだした気持ちを吐き出した。

「……自主練、しろって」
「誰が?」
「俺。五十嵐が見てくれる、らしい」

 正直、ただの自白。なんかもうどうでもいいやと思ったら、するすると言葉が浮かんでくる。いやもう、仕方ない。やるしかない。一人じゃ、ないんだし、と思ったら諦めもついた。

「へええ」
「なんだよ」
「宇田みたいなもやし野郎によく言うなと思っただけだけど」
「おい」

 そんな度会はわりとガッチリしてる体格だから、正直、どんなスポーツであってもこなせる男だ。で、俺は言われる通り、しょぼい体型だ。ゆえに、彼の発言をどうこう言える立場にはない。が、ちょっとむかついたのは事実だ。

「つーか、バスケとか卓球よりよっぽど楽じゃん。バレーなら自分にボール当たらない時だって、絶対あるわけだし」
「まあ、それはそうなんだけど」

 俺は、度会から視線を逸らす。
 ホームルームの日のことを、思い出して、俺はため息をついてしまっていた。