ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています

 なんだか心が落ち着かなかったせいか、五十嵐のことを誰かに言いたくてたまらなかった。
 そうなると、俺には度会しかいない気がして、つい、昼休みにその話題を言った。

「ってことがあってさ」
「へえ」
「五十嵐、すごいんだなって」

 俺は、なんと言葉にするべきかわからず、ざっくりと「すごい」と言ってみた。
 たぶん、そういう部類のことではないんだろうとはわかっているけれど。
 レンガ特製のふかふかパンを頬張りながら、俺はつぶやく。

「そりゃあ勉強できるわーって」
「で、おまえはやらないと」
「うるせえ度会」

 やろうと思ってできるなら、苦労はしないだろう。
 そう。何をどうまとめたらいいかなんて、俺には正直わかりっこないと思っている。

「オーソドックスなやり方じゃん、教科書読むのって。宇田は、なんでそんなに嫌なの」
「書いてる内容がわからん」
「威張るな」

 そうだよなぁと思いながら、俺ははあ、とため息をついた。
 彼のように、なんて軽々しく言っても結果には繋がらないけれど、

「……ああいう風にちゃんと過ごしてたら、今頃はさあ」
「今からでもやれよ。教科書、返したんだろ」
「ああ」

 一応、感謝の意はちゃんと伝えたかったので、最初は教科書に直接書こうと思ったが、なんだかこの完成された存在に手を入れることは難しいだろうと思って、そうするのはやめようと思った。

 女子の間ではメモ帳を挟むのがはやっているらしいが、あいにく俺はそういうのに疎い。幸い、ペンケースに入れっぱなしだったもらい物で、角も丸まった付せんがあったので「サンキュー」とガタガタの文字で書いて渡した。

 正直、次の授業まで見られることはないんだろうと思いながら、気恥ずかしくて内側の見えないところに綴じ込んだのだが、それを度会に言う気には、なぜか、ならなかった。