ルーズさが売りの俺が、生真面目クラスメイトに懐かれています


 翌日は、クラス全体での陶芸体験回だった。

 テーブルごとに教えてもらいながら、くるくると回る円盤の上の粘土と戦ってみている。

「……はあ」
「さっきよりはいい感じだよー。頑張ってー」
「ありがとうございます……」

 教えてくれるスタッフさんには励まされているけれど、どうにも不格好な気がして、手を入れ続けている。結果、目的の湯飲み型にはなってくれない。

 一応、器のていはなしているけれど、その程度だ。
 実際のところ、どうなんだろう。ぶっちゃけ、上手いやつらみたいに曲線美にこだわったり、細工を細かく付けられるほど余裕はない。
 刻々と、終了時刻が近付いていることはわかっているけれど、それ以上でも以下でもない。

 わりとヤケを起こしそうな気もしているけれど、周りの男子からはまだ諦めの気配はない。そんな先発隊になりたくないから無言で耐えているけれど、わりともう、限界かもしれない。

「そうそう、いい感じだよー」
「……っ、こ、うですか?」
「ああ、そこはもっとぐっといっても」
「いやでもさっきぐっといったら、ぐちゃっと、なったし」
「そう? もしダメでも何回でもやったらいいよー」
「無茶言わないでくださいよー……」

 教えてくれるおじさんたちはとても優しいものの、三度目の正直にぶつかっている自分の力は、かなり繊細に絞っている気がする。いつまでたっても分厚いままの器は、湯飲みというよりも、どちらかといえば花瓶が近いと思われる。

 最初の二回よりはマシかも、と思いながら、なんとか、慎重に慎重を重ねて、ミリ単位の攻防を繰り返すこと数回目。やっと、自分の中では「中」の度合いくらいまで頑張ることができた。
 ほかの奴らはもうおじさん達にくるっと糸を引いてもらったり、最終の色味の打ち合わせをしたり大忙し。
 俺も、もう自分の名前の書かれた紙の上に、自分の湯飲み三号を置いてもらおうとしたところだった。

「これくらいなら、どうですか」

 今まで一言も発しなかった五十嵐が、おじさんに声をかけた。
 誰より遅く言った五十嵐の出来栄えが気になったので、自分の湯飲みがちゃんと紙に置かれたのを確認してから、顔を上げ、五十嵐の手元を見る。

「え」

 俺の口からぽろりと本音がこぼれてしまった。想像していた、いわゆるカンペキに完成された器は、そこにはなかった。

 いや、別に、俺の方がうまいとは思わないけれど。
 芸術点がとても高い、と言えばいいのか。飲み口から形状から、形容しがたい爆発を感じて、回していたはずなのに、でこぼこに膨らんでいるそれのどこが何になったのか。

 おそらく、俺以外の近くにいたメンバーも同じようなことを考えていたのだろう。「あの五十嵐が?」と動揺を隠せずに、ぽかんと顔を開けたまま、五十嵐と生まれ出たそれを交互に見ていた。たぶん、俺もそんな顔をしていたのだろう。

「……」

 俺たちの無言の圧を感じたのか、五十嵐は、不服そうに目を細めた。
 心なしか、眉が下がっている気もする。

「ひどいだろ」
「……いや、うん……なんか」
「言わなくて良い」

 芸術的ってやつか、なんてフォローしようと思ったけれど、それは先読みされて、防がれてしまった。

「不器用なのは、わかってるから」

 そう言う五十嵐の顔は、ちょっとだけガキっぽくて、俺の湯飲みの飲み口以上に、ぐんにゃりとゆがんでしまったのだった。