優等生の僕が、問題児に「つまみ食い」されるまで

 縁結びの神社が毎年、八月末に開催している。有名な縁結びスポットで、県内外から人が来る。
 うちの両親は、いつでもラブラブである。喧嘩していることを、見た記憶がない。

 言い争っていても、痴話喧嘩というやつだったりする。だから僕の中では、あれは喧嘩に入らない。
 息子の前で、普通にイチャつく二人だからな。喧嘩するよりも、その方がいいかもしれない。
 だけど、正直見たくはないかな。まあ、仲睦まじいから文句はないけど。

「……一緒に行かないか」
「どうして」
「……はあ……一筋縄じゃ、いかないか」
「何の話だ」
「こっちの話。別にカップルじゃなくても、行ってもいいだろ」
「まあな」
「よしっ、決まりっ」
「じゃあ、その前に宿題を終わらせよう」
「ガンバリマス」

 朔弥くんはポスターをガン見して、何かを考えているようだった。一緒に行かないかと、言われてしまった。
 縁結びの神社に行きたいらしく、誘ってきた。別にいいが、どうしてなのか疑問である。

 そこで、カップルじゃなくてもいいと言っていた。分かったぞ、それってつまりは。

 ――――彼女が、欲しいってことか。

 それならそうと、言ってくれればいいのに。まあ、中々に言い出しづらいことであるよな。
 行くことが確定すると、ガッツポーズしていた。そんなに嬉しいだなんて、可愛いとこあるじゃないか。

 少しだけ胸が痛いのは、何故だろうか。分からないが、楽しみだな。
 まあ、その前に宿題を終わらせないとな。その指摘をすると、棒読みだった。

「はあ……ちょっと早かったか……はあ……この服装、おかしくないよな」

 夏祭り当日、何を着ていけばいいのか悩んでしまった。友達と遊びに行くなんて、小学生ぶりだったからだ。
 約束の時間の一時間前に到着してしまい、壁に寄りかかりゲームをしている。

 しかし気になってしまい、集中できない。自分でもどうかと思うが、楽しみで昨日眠れなかった。
 あれから、バイトの隙間で勉強を教えた。驚くくらいに、飲み込みが良かった。

 次のテストでは、高得点を取れるだろう。この僕が教えてるのだから、当たり前だけど。
 ダメだ、なんでこんなに上から目線なんだよ。何がダメって、最近僕の情緒が不安定なことである。

「よっ、待たせたな」
「別に、待ってない」
「そうか〜なら、良かった。行こうぜ、腹減った」

 ため息しか出ないでいると、声をかけられた。振り向くと、朔弥くんが笑顔を浮かべていた。
 何故か、浴衣を着ている。なんか、浮かれているのが目に見える。

 黄色のストライプで、派手オブ派手だった。どこにいても、目立ちそうだな。
 現に、いろんな人に見られている。女性陣からは、キラキラした瞳で見られている。

 正直、このパリピといると悪目立ちする。しかしそんな僕の感情は知らないのか、当たり前のように手を握ってきた。
 こいつ、普通に手を繋いでくるようになった。まあ、人混みで逸れないようにってとこだな。

「たこ焼き、美味しい。だけど、熱いっ」
「火傷したら、痛いぞ〜ふう、あっ……青のりが」
「もうっ、何やってんの」
「ごめんちゃい」
「ったく」

 屋台でたこ焼きを買って、二人でシェアをした。その方が、多くの物を食べられるからね。
 そしたら、冷ましてくれようとした。それはいいが、そのせいで青のりが飛んでしまった。

 そのことを指摘すると、罰が悪そうにしていた。両手を合わせて、謝ってきた。
 悪気があったわけじゃないし、多めに見てあげることにした。僕って、とてつもなく優しいからね。

「屋台の焼きそばって、どうして美味いんだろうな」
「だな〜鉄板で焼くだけで、香ばしくなるよね」
「フランクフルトも美味そうだな」
「食べる?」
「……後で自分で買うから、いい」
「そう? 美味しいのに」

 近くのベンチに座って、焼きそばを食べていた。美味しいようで、見ているだけで満足した。
 僕はこいつと違って、少食だからね。あまり食べると、後々動けなくなる。

 そのため、フランクフルトをちまちま食べている。美味しそうだと言うので、口元に差し出した。
 すると、少し考えて遠慮してきた。まあ、一口じゃ足りないか。

「ふう〜ラムネって、美味しいよね」
「ああ……だな」
「どうしたんだ? なんか、大人しい。熱でもあるのか」
「暑くて」
「まあ、夏だからな」

 ラムネを飲んでいると、静かだった。僕を見つめているが、そこには熱が籠っているように見えた。
 熱でもあるのか、ぼうっとしているな。気になったため、聞いてみる。

 すると風邪とはでなく、ただ単に暑いらしい。具合が悪いのでなければ、それで良かった。
 お腹も膨れたし、今度は遊ぼう。何をするのか、楽しみでワクワクしてきた。

「【幕末ドライバー】のフィギュアがあるぞ」
「これって、プレミアモノだよな」
「欲しかったけど、お金の問題で諦めたんだよな」
「買いたいよな」
「うっ……よしっ、買った!」
「盛り上がってるとこ悪いけど、これ射的の景品だよ」
「あっ、はい」

 歩いていると、【幕末ドライバー】のフィギュアが目に入ってきた。朔弥くんと盛り上がっていた。
 欲しいため、少し悩んで買うことにした。するとお店の主人から、射的だと言われてしまった。

 くっ……仕方ない、頑張るしかないな。だけど僕は、絶対に無理な気がする。
 トライするのはいいけど、お金と時間の無駄になりそう。他の人がやっているのを見て、悩んでしまう。

「俺がやるよ」
「取れるの?」
「射的の虎とは、おいらのことだ」
「ダサい上に、射的と虎の因果関係について」
「ツッコんでもいいが、欲しくないのか」
「欲しいです」
「前のめりだな。まあ、勉強教えてもらってるし。人肌脱いでやりましょう!」
「ドンドンぱふぱふっ」

 朔弥くんがやってくれると言うので、素直にお願いしようとした。しかし、意味の分からないボケをしている。
 そのため、思わずツッコんでしまう。するとへそを曲げてしまったため、煽てることにした。