僕の知る君は、嘘つきで死にたがり

それだけで、胸の奥がわずかに緩む。
理由は分からない。

期待していたわけでもないのに、返ってきたこと自体が、ひどく現実的だった。

それから、やり取りは自然に続いた。
特別な約束があったわけじゃない。

気が向いたときに、ぽつりとメッセージが届く。

「今日はちょっと寒いですね」

当たり前の一言。

でも、昨日の消えたいと同じ人が書いていると思うと、不思議な感じがした。

「ですね。急に冷えましたよね」

会話は、それだけで終わることもあった。
続かない日もある。

それを気まずいと思う自分がいることに、颯馬は少し驚いた。

ある日、こんなやり取りがあった。

「そういえば、お名前って…⋯」

名前。そうだ、まだ名乗っていなかった。

「颯馬です」

数分後。
「颯馬さんでしたよね?」

確認するような言い方。
一度読んで、もう一度読み返す。

「はい、そうです」

それだけの会話なのに、妙に印象に残った。
名前を呼ばれた、というより、自分が誰かとして認識された感じがした。

その後、美麗さんはいろんなことを話してくれた。
少しだけ嬉しかったこと。

電車で隣に座った人の咳が止まらなかったこと。
夜中に食べたアイスが、思ったより美味しかったこと。