いいところに連れて行ってあげますよ、と言われて齊藤の車に乗せてもらい、車窓から流れる景色を眺める。
沈み始めた夕日が目に眩しい。
「齊藤さん」
「レンレンでいいですよ」
「なんで、今さら陽介の恋人の自殺のことを調べていたんですか?もう、1年くらいは前の話ですし、殺人じゃないのに」
「そんなに不自然なことではないですよ。警察は徹底的に調べたがる生き物なので」
無言のままじっと横顔を見つめると、弱ったな、と苦笑された。
「君には嘘がつけませんね。正直に言います。君と水無月君のことを、交番勤務の頃から知っていたんです。まあ、知っていたといっても、一方的に見ていただけなんですけどね」
「見ていた?」
「はい。多分、君たちは僕には気づいていなかったでしょうけど、登下校でいつも仲良くしている二人を見て、微笑ましく思っていたんです。でも、それが、ある時から君が一人で歩く姿を見かけるようになって、相当思い詰めた顔をしているのを見て、ずっと気がかりでした」
そんな時、水無月の恋人が自殺したことを知り、交友関係を調べる中で、俺の今の状況を知ることになったという。
「警察をやっていて、あれだけ良かったと思えたのは初めてでした」
「齊藤さんは」
「はい」
「いつもそうやって、人を助けているんですか?」
俺は望んでいる言葉が欲しくて、質問を投げかける。
これで通じてほしいと、願いながら。
「……いいえ。最初は警察官としての正義感とか、同情に突き動かされていましたが、君はちょっと、僕の中では違う括りにいるみたいです。同僚にね、言われたんですよ。どうしてそこまでそんなにその子に入れ込むのかって。その時初めて、自覚しました」
「それは……」
続きを促そうとした、その時だった。
フロントガラスの向こうに、どこまでも続く桜並木が現われた。
すっかり夜の帳が降りてしまった中で、ライトアップされた桜の木々が美しく、妖艶に浮かび上がっている。
それを息を飲んで眺めるうち、するりと言葉を紡いでいた。
「齊藤さん、俺と付き合ってくれますか」
齊藤は、ゆっくりと路肩に車を止め、俺に口付けた。
幻想的な景色の中で、俺は瞼を閉じ、齊藤に身を委ねる。
「この続きは、高校を卒業してからしましょう」
鎖骨に歯を立て、息を荒くしながら言われる。
「齊藤さん、2年もありますよ」
「……」
大人としての理性が音を立てて崩れるのも、すぐそこまで来ている気がした。
end
沈み始めた夕日が目に眩しい。
「齊藤さん」
「レンレンでいいですよ」
「なんで、今さら陽介の恋人の自殺のことを調べていたんですか?もう、1年くらいは前の話ですし、殺人じゃないのに」
「そんなに不自然なことではないですよ。警察は徹底的に調べたがる生き物なので」
無言のままじっと横顔を見つめると、弱ったな、と苦笑された。
「君には嘘がつけませんね。正直に言います。君と水無月君のことを、交番勤務の頃から知っていたんです。まあ、知っていたといっても、一方的に見ていただけなんですけどね」
「見ていた?」
「はい。多分、君たちは僕には気づいていなかったでしょうけど、登下校でいつも仲良くしている二人を見て、微笑ましく思っていたんです。でも、それが、ある時から君が一人で歩く姿を見かけるようになって、相当思い詰めた顔をしているのを見て、ずっと気がかりでした」
そんな時、水無月の恋人が自殺したことを知り、交友関係を調べる中で、俺の今の状況を知ることになったという。
「警察をやっていて、あれだけ良かったと思えたのは初めてでした」
「齊藤さんは」
「はい」
「いつもそうやって、人を助けているんですか?」
俺は望んでいる言葉が欲しくて、質問を投げかける。
これで通じてほしいと、願いながら。
「……いいえ。最初は警察官としての正義感とか、同情に突き動かされていましたが、君はちょっと、僕の中では違う括りにいるみたいです。同僚にね、言われたんですよ。どうしてそこまでそんなにその子に入れ込むのかって。その時初めて、自覚しました」
「それは……」
続きを促そうとした、その時だった。
フロントガラスの向こうに、どこまでも続く桜並木が現われた。
すっかり夜の帳が降りてしまった中で、ライトアップされた桜の木々が美しく、妖艶に浮かび上がっている。
それを息を飲んで眺めるうち、するりと言葉を紡いでいた。
「齊藤さん、俺と付き合ってくれますか」
齊藤は、ゆっくりと路肩に車を止め、俺に口付けた。
幻想的な景色の中で、俺は瞼を閉じ、齊藤に身を委ねる。
「この続きは、高校を卒業してからしましょう」
鎖骨に歯を立て、息を荒くしながら言われる。
「齊藤さん、2年もありますよ」
「……」
大人としての理性が音を立てて崩れるのも、すぐそこまで来ている気がした。
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