齊藤は約束通り、その翌日もやって来た。
母とどのようなやり取りが交わされているのかは分からないが、裏で結託しているのだろうということは察せられた。
「こんにちは。今日は、僕の話をしましょう」
いきなり始まった齊藤の自分語りは、最初に恋愛相談が特技だと話していた通り、恋愛絡みの話ばかりだった。
それも、齊藤自身の話というより、齊藤の周囲の人間の話がほとんどだった。
「先生自身の恋愛は?」
俺が尋ねると、齊藤は目を細めて密やかに微笑む。
「僕の恋はね、ロミオとジュリエットでした」
「親に反対されたんですか?」
「親だけでなく、友人にも反対されました。結果として、僕は彼と別れを選ぶしかありませんでした」
齊藤が「彼」と呼んだことで、俺は自分が齊藤の恋愛対象となり得ることを知った。
それを知ったところでどうなるわけでもないのに、なぜか妙な緊張を覚えた。
「先生」
俺は、自分が何を聞こうとしているのか分からないまま、口を開く。
齊藤が俺を見る。
最初はへたれな印象を感じさせる目だと思っていたけれど、今はむしろ、齊藤の言葉を借りるならば、乗り越えた者だけが持てる力強さが感じられた。
「先生」
もう一度呼べば、齊藤は楽しげに目を細めて笑う。
「僕のことを意識しました?」
図星だった。羞恥心に二の句も告げられなくなると、齊藤はさらに笑った。
「冗談ですよ。反対されて別れたのは本当ですが、相手は女性です」
「何で、そんな嘘を」
「下心です」
さらっと口にされて唖然とすると、齊藤は冗談ですよ、と真意の読めない口調と目つきで告げた。
母とどのようなやり取りが交わされているのかは分からないが、裏で結託しているのだろうということは察せられた。
「こんにちは。今日は、僕の話をしましょう」
いきなり始まった齊藤の自分語りは、最初に恋愛相談が特技だと話していた通り、恋愛絡みの話ばかりだった。
それも、齊藤自身の話というより、齊藤の周囲の人間の話がほとんどだった。
「先生自身の恋愛は?」
俺が尋ねると、齊藤は目を細めて密やかに微笑む。
「僕の恋はね、ロミオとジュリエットでした」
「親に反対されたんですか?」
「親だけでなく、友人にも反対されました。結果として、僕は彼と別れを選ぶしかありませんでした」
齊藤が「彼」と呼んだことで、俺は自分が齊藤の恋愛対象となり得ることを知った。
それを知ったところでどうなるわけでもないのに、なぜか妙な緊張を覚えた。
「先生」
俺は、自分が何を聞こうとしているのか分からないまま、口を開く。
齊藤が俺を見る。
最初はへたれな印象を感じさせる目だと思っていたけれど、今はむしろ、齊藤の言葉を借りるならば、乗り越えた者だけが持てる力強さが感じられた。
「先生」
もう一度呼べば、齊藤は楽しげに目を細めて笑う。
「僕のことを意識しました?」
図星だった。羞恥心に二の句も告げられなくなると、齊藤はさらに笑った。
「冗談ですよ。反対されて別れたのは本当ですが、相手は女性です」
「何で、そんな嘘を」
「下心です」
さらっと口にされて唖然とすると、齊藤は冗談ですよ、と真意の読めない口調と目つきで告げた。
