虎倉井ブリーズワールドの楽しい思い出を募集しています

 提供映像3
 提供者:ハルさん
 撮影時期:1997年4月20日。
 撮影者との関係:夫が撮影。

 映像に関するエピソード

 結婚の1年前、当時交際中だった夫と、虎倉井ブリーズワールドでデートをした時の映像です。私たちはいわゆる絶叫マシンが得意ではなかったので、ブリーズワールドでは食事や買い物を楽しみ、最後は観覧車に乗って、ゆったりとした時間を過ごすのが、私たちのデートの定番でした。個人的なお話で恐縮ですが、この映像の1年後、夫からプロポーズをされたのも虎倉井ブリーズワールドの観覧車の中でのことでした。私たち夫婦にとってはまさに、大切な思い出の詰まった場所です。

 今回この「虎倉井ブリーズワールドメモリープロジェクト」について知ったのは、私の職場にアルバイトで入っている、大学生の女の子がきっかけでした。彼女はSNSでプロジェクトを知ったそうですが、虎倉井ブリーズワールドの名前は何となく知っているけど、どんな遊園地だったのかは何も知らないそうです。閉園からもう25年が経ちますから、虎倉井ブリーズワールドについて知らない世代が出てくるのは仕方がないことですが、思い入れのある身としては、寂しさを覚えました。だからこそ、虎倉井ブリーズワールドの楽しい思い出を後世に残したいという、プロジェクトの理念に強く感銘を受けました。

 虎倉井ブリーズワールドのことを知らない世代にも、かつてこういう遊園地があったんだよ。たくさんの人の思い出が詰まった素敵な場所があったんだよということを、映像を通して伝えていけたらなと存じます。

 ちなみに、映像の後半に、大人の事情に触れてしまうかもしれない箇所が存在しています。問題があるようでしたら、風祭映像企画様の判断で加工していただいても構いません。

【映像本編】

「ビデオカメラなんて、いつ買ったの?」

 映像は、虎倉井ブリーズワールドの入場口前で、突然ビデオカメラを取り出した恋人に驚く、ハルさんの表情から始まっている。当時流行っていた、シャギーカットの髪型が印象的だ。

「会社の先輩が新しいビデオカメラを買ったからって、古いカメラをくれたんだよ。せっかくなら使ってみようかなって」
「だったら教えてくれたらよかったのに」
「サプライズだよ。驚かせたくて。おかげでいい表情が撮れたよ」
「何よそれ。もう一人前のカメラマンの気取り?」

 口ではそう言いながらもハルさんは笑っており、カメラに目線を送り、決め顔を作ってみせた。

「キッチン、今日は混んでるわね」
「あれじゃない。新メニューの提供開始」

 昼食を食べようとタイガーキッチンの前までやってくると、お昼時なのを考慮しても普段より利用客が多く、一時間以上の待ち時間が発生していた。カメラに撮影者の左手が映り、指さした先には、新商品「タイガーオムレツ」の提供が始まりましたという幟が風に靡いていた。

「今日はワゴンで何か買って食べましょうか」
「それがいいね」

 一時間待ちは避けて、二人は軽食やドリンクを販売しているワゴンで何かを買って、昼食を済ませることにした。

「たまにはこういうのもいいわね」
「ピクニック気分が味わえて最高だよ」

 場面は変わりハルさんは、飲食可能な東側のベンチに腰掛け、ワゴンで購入したホットドックを頬張っていた。東側のベンチは周辺はキトラくんを始めとする、虎倉井ブリーズワールドのキャラクターのブロンズ像がたくさん置かれているエリアで、周囲にはアトラクションがない。そのため人通りの少ない、穴場の休憩スポットとなっている。

「食べてる姿も可愛いね」
「恥ずかしいから撮らないでよ」

 ケチャップがついった口元を隠しながら、ハルさんは取材NGですと言わんばかりに、カメラを持つ恋人の手をグイっと押しのけ、右隣に座るハルさんを映していたカメラが一瞬、ベンチの正面を向いた。

「そうかな? これでこそホームビデオって感じがしない」

 カメラには、少し離れた反対側のベンチに座っていた小さな女の子に、風船を持ったキトラくんの着ぐるみが歩み寄っている様子が映っている。カメラだけが押しのけられ、撮影者自身はハルさんの方を向いているのだろう。声のする方向が少し違う。

「今度は上手に食べるから、もう一回撮って」
「分かったよ。TAKE2」

 カメラは再びハルさんへ向く。口元についたケッチャプを拭くと、直前のシーンのリベンジにと、ハルさんは今度は別に買っていたポテトを一本食べようとしたが。直後にパンと、何かが破裂した軽い音が周辺に響いた。

 カメラは反射的に、音がした反対側のベンチの方へと向く。反対側のベンチには誰も座ってはおらず、周囲に人の姿もない。

「今の何の音?」
「どこかで風船が割れたんじゃないかな。あの音ってけっこう響くし」

 場面が変わり、二人は虎倉井ブリーズワールドのシンボル的存在である、大きな風車の形をした観覧車、タイガーウインドのゴンドラの中にいた。向かい合う形で席に座り、ハルさんは内側の席に座り、カメラに笑顔を向けている。

「私の顔はもうたくさん映したでしょう。せっかくのビデオカメラなんだから、高いところから園内の景色でも撮ってみたら?」
「それもそうだね」

 ゴンドラの位置が上がってくると、ハルさんの提案に頷き、カメラが窓の方へと向いた。

「今まであまり意識したことなかったけど、高い位置からだとこういう風に見えるんだね」

 撮影者が楽しそうに声を震わせる。西側にはタイガーホールのレールが見え、今まさに最高到達点からコースターが急降下しようかというところだった。レールよりも高い位置から撮影するコースターというのは新鮮な画だった。

「ねえ、あそこを見て」

 ハルさんが指さす方にカメラを向けると、グッズを販売しているタイガーマーケットの建物の近くで、キトラくんの着ぐるみが、家族連れとカメラで記念撮影をしている姿が遠目に映った。

「今度はあっちを見てみて」

 次にハルさんが指さしたのは、中央の噴水広場の方向。そこには風船の束を持った、キトラくんの着ぐるみの姿がある。

「ちなみにあっちにも」

 ハルさんが最後に指さしたタイガーフォレストの建物の近くでは、キトラくんの着ぐるみが若い女性二人組とハグを交わしていた。
 カメラの映像は二度、三か所を行き来したが、やはり全ての場所にキトラくん存在している。

「三人、じゃなくて三体いるね。何だかいけないものを見てしまった気分」
「まあ、何体か着ぐるみがいないと回らない時もあるよね」

 大人の事情を感じ、ハルさんは苦笑を浮かべていた。

「見て見て、綺麗な夕日」

 ゴンドラが頂上付近に差し掛かると、綺麗な夕焼けが世界を支配していた。外の景色も去ることながら、カメラの映像は夕焼けに照らされたハルさんの横顔を捉えて離さなかった。

「綺麗だよ。ハルちゃん」

 以上がハルさんから提供された、虎倉井ブリーズワールドの記録映像である。