虎倉井ブリーズワールドの楽しい思い出を募集しています

 提供映像1
 提供者:ハッシーさん。
 撮影時期:2000年8月20日。
 撮影者との関係:本人が撮影。

 映像に関するエピソード

 夏休みに、妻と、当時小学5年生の娘と三人で遊びに行った際の映像で、背の伸びた娘が、初めてタイガーホールに乗った時のものです。
 虎倉井ブリーズランドには家族で何度も訪れ、ホームビデオもたくさん撮影しましたが、以前引っ越しの整理でほとんどのビデオを処分してしまい、残念ながら現在手元に残っているのはこれだけです。
 今回このプロジェクトを見つけ、ビデオテープを応募してみようと提案してくれたのは娘夫婦でした。娘は立派に成長し、今年で37歳になります。孫も、当時の娘と同じ11歳になりました。私も歳を取るはずですね。
 虎倉井ブリーズワールドは私たち家族にとって、たくさんの思い出が詰まった大切な場所です。まさか、映像を撮影した翌年に閉園してしまうとは、この時は夢にも思っていませんでしたが。

 私どもが提供した映像が、虎倉井ブリーズワールドの記録を後世へと残す一助となれば幸いです。

【ビデオ映像本編】

 映像は、虎倉井ブリーズワールドの入場ゲート前から始まった。

「〇〇。こっちを見て」

 撮影者である父親、ハッシーさんが、入場ゲートを背景に娘を映そうとカメラを向けた。おさげ髪の少女が、慣れた様子で、カメラに向かってピースサインをしている。過去にタイガーマーケットで購入したのだろう。肩から下げているポシェットには、キトラくんのストラップがぶら下がっていた。

「いい笑顔ね」

 ハッシーさんの奥さんだろう。カメラの画角には映っていないが、楽しそうな女性の声が入っている。

「お父さん。タイガーホールに乗ろうよ」

 場面が変わり、カメラはタイガーホールの入場口と、そこへ行こうと急かす娘の様子を映している。娘に手を引かれているため、画面が少し揺れていた。夏休みシーズンということもあって、園内は家族連れを中心に賑わっている。

「乗るのは初めてだろう。怖くないのか?」
「怖くないよ。背が伸びたら絶対に乗るって決めてたんだもん」

 そう言って娘は、入場口前に設置されている、「130cm以下の方はご利用いただけません」と書かれた、身長のメモリがついたパネルの前に立った。130cmのメモリよりも少し頭の位置が高い。

「お姉さん。私、乗っても大丈夫ですよね?」
「はい。もちろん大丈夫ですよ。楽しんできてくださいね」

 虎倉井ブリーズワールドの制服である、緑色のポロシャツを着た係の女性に尋ねると、笑顔で手を振って送り出してくれた。

「お父さん。早く乗ろうよ」

 早く列に並ぼうと、娘がカメラ目線で手招きをしている。

「〇〇も大きくなったな」
「本当ね」
「きゃああああああ!」
「うわあああああああ!」

 娘の成長を喜ぶ、両親の穏やかな声が流れた直後、情緒を壊すように、複数名の男女の絶叫と轟音が響いた。ジェットコースター型アトラクション、タイガーホールの目の前なので、定期的な絶叫はつきものだ。

「カメラは私が預かっておくから。〇〇と一緒に楽しんできて」
「むしろ俺の方が苦手なんだけどな」
「しっかりなさい。お父さん」

 カメラが奥さんの手へと渡り、手を振りながら入場口に入っていく親子の背中を撮影する。そこで映像は一度終わった。

「楽しかったね。また後で乗ろうよ」
「……そ、そうだな。お父さんはちょっと疲れたけど」

 場面が変わり、再びハッシーさんがカメラマンに戻る。タイガーホールから降りてきた直後なのだろう。降り場に近い、園の中心にある噴水広場が映っている。撮影者のハッシーさんはグロッキー状態なのか、ベンチに座っているようだ。楽しそうに何度もタイガーホールのレールの方を指さす娘と、カメラの目線の高さが同じになっている。

「あっ、お父さん見て見て。キトラくんがいるよ!」

 声を弾ませる娘が指さす方に、ゆっくりとカメラが向く。すると噴水広場の端の方でキトラくんの着ぐるみが、一人でいた小学校低学年ぐらいの男の子に対して、屈んで目線を合わせていた。周りに大人の姿がないので、男の子は迷子なのかもしれない。その後、男の子はキトラくんに手を引かれていく。これから迷子センターに向かうのだろう。長々と映すのも申し訳ないと思ったのか、ハッシーさんはそこで一度撮影を止めた。

 場面が変わり、カメラはタイガーキッチンでの食事風景を撮影している。

「もう駄目よ。野菜も食べないと」
「今日ぐらいはいいじゃん。お家ではいっぱい食べるから」
「まあまあ母さん。遊園地でぐらい、好きなものばかり食べてもいいじゃないか」

 娘がバイキングで盛り付けてきたプレートは、ジャンクフードやデザートばかりだったが、奥さんの苦言はそこまで本気ではなかったのだろう。すぐに「もうしょうがないわね」と言って、笑っていた。

「夏休みだけあって、流石に混んでるな」
「本当ね。混む前に席を取って正解だったわ」
『迷子のお知らせです。山梨県からお越しの――』

 場面が切り替わると、映像はグッズを販売しているタイガーマーケットの店内を映している。時刻は16時を過ぎたところ。帰る前にお土産を見て回っているのだろう。

「このキトラくんのぬいぐるみがいいな」

 娘が手に取ったのは、アロハシャツを着たきとらくんのMサイズのぬいぐるみだった。

「キトラくんのぬいぐるみなら、前来た時にも買っただろう」
「これは季節限定のキトラくんなの。お願い買って」

 意見を求めるように、カメラが奥さんの方を向く。苦笑を浮かべながらも頷いていた。

「分かったよ。一学期の成績が良かったから、そのご褒美だ。二学期も勉強頑張るんだぞ」
「ありがとうお父さん!」

 笑顔の花を咲かせると、娘はアロハキトラくんぬいぐるみを買い物カゴの中へと入れた。そのまま会計を済ませ、アロハキトラくんぬいぐるみは晴れて、ハッシーさん一家に迎え入れられることとなった。

『迷子のお知らせです。山梨県からお越しの――』

 場面が切り替わり、カメラは虎倉井ブリーズワールド駐車場に止められた、ハッシーさんの車の中を撮影している。後部座席に座る娘は遊び疲れたのか船を漕いでいた。腕には先ほどタイガーマーケットで購入した、アロハキトラくんぬいぐるみが抱っこされている。

「〇〇。楽しかったかい?」
「……うん。すごく楽しかった……」

 娘はすでにウトウトしていたが、大好きなキトラくんのぬいぐるみはしっかりと抱きしめている。

「すっかり遊び疲れちゃって。楽しんだ証拠ね」
「冬休みにでも、また遊びこよう」

 カメラが正面を向き、ルームミラー越しのハッシーさんの微笑みが一瞬、映った。

「お父さんはもうひと踏ん張り、帰りの運転をするとしますか」

 運転するために、ハッシーさんはビデオカメラの撮影を切った。
 
 以上がハッシーさんから提供された、虎倉井ブリーズワールドの記録映像である。