いつかきっともう一度







目の前には学校のパンフレットで見た通りの校舎が広がっていた。

「まだ、あまり人が来ていないみたいだな。」


奏くんが、校門を通りながら言った。

予想以上に早くついてしまい、周りにはまだ誰もいない。

2人で校舎への道を歩きながら、校舎への道を進んで行く。

「お前ら、新入生かぁー?」

「「…っ!!」」

突然前から大きな声が聞こえてきた。
思わず、私と奏くんは身構えてしまう。


「2人とも来るのが早くて良い事だっ!!」

(大きい…)

体が筋肉質で、見るからに体育系の教師であろう男の人が顔に笑みを浮かべながらこっちへ来た。


「下駄箱のある玄関にクラス分けの表が貼ってあるから、それを確認してこいっ!」


彼が指を指した校舎の出入り口を見てみると、外には大きな紙が貼ってある。


「わざわざありがとうございます。」

奏くんが話すのに合わせて、私は急いで頭を下げる。

「俺は体育科を受け持つ佐藤だ。
これからの体育の授業は俺が担当するから
よろしくなっ!」

予想通りの担当科目に奏くんも私も納得する。
もう一度私は会釈し、紙が貼ってある方向へ向かって歩き始めた奏くんについていく。


道沿いには、色鮮やかなチューリップやパンジーが花壇の中で咲き乱れている。

「何見てるの?」

花の周りを舞う蝶に目を奪われていると、隣には奏くんが来ていた。


「花壇の花が綺麗で……」

一瞬驚きながらも、私が話し出すと彼は幸せそうな顔で「本当だ、綺麗だね。」と言った。


「っ!」


蝶を見て言ったのだとわかっていても、彼の口から溢れる褒め言葉はとても暖かく、見惚れてしまう。


「早くクラス表見に行こう!」

気恥ずかしさを紛らわすために慌てて立ち上がる。

「そうだな、」

奏くんはゆっくりと立ち上がりながらこちらをみる。

奏くんが付いてくるのを確認して、わたしはクラス表をみる。

「入学おめでとうございます」

紙には大きな明朝体で、私たち新入生への祝いの言葉が書かれている。

「同じクラスだね。」

私が頑張って自分の名前を表から探していると隣に立っている奏くんが一足先に自分の名前を見つけてくれたらしい。


「ほら、あそこ」

奏くんが、一年四組の名簿を指差して私の名前と奏くんの名前の部分を確認させてくれた。


(こんなにも、同じクラスになれて嬉しいと感じられるのは、きっと奏くんだからだろうな。)

さっきまでは、他人だったはずなのにすぐに相手の心の中に入り込めてしまうのは、彼の雰囲気のおかげなのだろう。

初めて感じる感情に喜びと驚きを隠しきれないせいか、自然に口元が緩んでいくのが、自分でもわかる。

必死に奏くんに見えないように、急いで入り口を通って下駄箱へ早足で駆け寄る。


さっき確認した出席番号の札が付けられている下駄箱へ靴を入れ、上靴を履く。

 私の下駄箱の隣には奏くんの下駄箱があり、奏くんが上靴を履いたのを見て、学校内の地図で新入生のクラスの場所をみつける。

(多分こっちだよね。)
やはり地図が読めない私は感を頼りに進もうとする。

「こっち。」
急に肩を掴まれびっくりすると、奏くんがまた笑いながら反対の道を指差す。


「……道案内、お願いします」
私は小さく息を吐いて、相変わらず笑い続ける彼を見るのを諦めた。

(諦めて、奏くんに着いていこう)

奏くんは地図を一回見ただけのはずなのに迷いなく歩いていく。


方向音痴の私とは真逆の奏くんが羨ましく思える。

歩いていく奏くんに着いていくと、一瞬で一年四組の教室に着く。

窓からは、校舎の中庭側の桜の木が一定の間隔を空けて並んでいる。


それはまるで私たちのことを祝福してくれているようだった。


黒板には出席番号順に席順が決められているのか、教室にある机の個数分の枠に1から25までの番号が割り振られている。

私は、窓側の一番後ろの25番の席にカバンを置く。

前を見ると、一つ前の出席番号の奏くんが椅子に腰を下ろす。

(目の前に奏くんがいる…)

きっと、優しくて容姿端麗な奏くんはクラスで人気者になるのだろう。

そんな奏くんの後ろの席は、結構羨ましがられるのではないだろうか。

「よろしくね。」

振り返ってわたしに微笑みながら言った奏くんのことを私は、きっと忘れないだろう。