アラーム音を聞いて私は、重たいまぶたを擦りながらゆっくりと起き上がる。ベッドから降りてカーテンを左右に引っ張り窓の外を見ると、外はちょうど日が出てきていたところだった。
まだ眠気が残るまま洗面台へ向かう。冷たい水で顔を洗って、一気に眠気がさめる。
そして、何度も夢に見た、新品の制服に腕を通していく。
鏡に映る見慣れない服を着た自分を見ながら、制服のしわを少し整え鞄を手にとり玄関へ向かう
「萌音、いってらっしゃい。」
玄関の棚から新しいローファーを手に取った時、後ろから叔母の紗智子(さちこ)さんが声をかけてきた。
私は新品で少し硬いローファーをなんとか履き、後ろを振り返って笑顔で「いってきます!」と声をかけながら玄関のドアを開けた。
外へ一歩出ると、まだ少し寒さが残る春の風が吹きかけてきた。
上を見ると風で舞っている桜の花びらと共に真っ青な空が水平線まで広がっている。
(今日はいい日になりそう!)
そんな春の空気を吸って一呼吸してから、最寄駅へと足を進めた。
10分ほど歩いて行くと駅に着く。改札を通り、スマホの電車アプリで自分が乗る電車を確認し間違えないように気を付ける。
ホームに着くと、時間が早いからか、人はいつもよりも多く感じた。
いつもより早い時間だとこんなにも人が多いの?と戸惑いながら狭い隙間を抜けて一番前の車両の乗り場に並ぶ。
駅のアナウンスと共にきた電車を見て私は呆気に取られた。
そこには溢れかえるほどの人、人、人…
自分の想像を遥かに超える人数が、
いつもは広いと思っていた電車に
ぎゅうぎゅう詰めで乗っていた。
(こんなとこにどうやって乗ればいいの?)
一気に私の不安が広がる。
━「まもなくドアが閉まります。危険ですので駆け込み乗車は、おやめください。」
(あっ…!)
ベルの音と共にアナウンスの声がホーム中に鳴り響く。
私は慌てて狭い電車の中に隙間を探して乗り込んだ。
「ドアが閉まります。」
かろうじて間に合い、ほっと息をついた瞬間、ドアが閉まったことでより一層周りの人との距離が近くなった。
(学校に着く前に、人に潰されそう…)
カバンを抱え、ドアと人に板挟みされあまりにも窮屈な電車の中で私はごそごそと、高校の入学祝いに紗智子さんに買ってもらったイヤホンをポケットから取り出し耳につけた。
スマホで音楽アプリをタップし、いつも聴いているプレイリストの再生ボタンをおす。
「♪♬♩」聴き慣れたピアノの音色が耳に入ってきたのだが、、、
あれ、これもしかしてスマホに接続されてない?!
急いでイヤホンをとると、さっきよりも大きな音量で曲が流れていた。
あまりにも静かな電車の中で、ピアノの音色が響き渡る。
周囲の人が私のことを見てうんざりしている気がして、慌てて停止ボタンを押し、顔を赤くしながらイヤホンに接続し直した。
満員電車で間違って曲を流してしまい、狭すぎて潰されそうな気持ちに追い打ちをかけるかのように、恥ずかしさでいっぱいになってしまった。
(初日からこんなにもダメダメなのって、悲しすぎる…)
これから電車に乗るときはしっかりと接続されているか確認してからつけようと心の中で強く誓った。
ようやく人が少なくなってきて、椅子に座ることができ、一安心したのでカバンから本を取り出し読み始める。
本を読み進めていくうちに、これからの高校生活がどんなものになるのか想像していく。
(友達を頑張って1人でも作ろう!)
それがわたしにとって、高校生活での大きな目標だった。
「まもなく⚫︎⚫︎駅⚫︎⚫︎駅です。お忘れ物がないようお気を付けください。」
アナウンスで、ようやく自分が降りる駅の名前が呼ばれる。私は急いで本をしまいドアの前にたった。
「ドアが開きます」
アナウンスを聞きながら電車から降りて、改札から一歩出ると、そこには一本の大きな桜の木が立っていた。
(受験をしにきた時は、緊張で周りの風景は目に入らなかったけど、こんなにも大きな桜の木があったんだ。)
桜の香りを感じながら、去年の自分の努力にしみじみする。
紗智子さんに大きな負担はかけたくない一心で、成績上位者には、補助金が配布される学校を探して、寝る間を惜しんで勉強した日々を思い出す。
そうして見事、補助金をもらい入学する高校への道を歩いて行く、、、はずだった、、、
(ここどこ?!!)
方向音痴の私にとって高校までの入り組んだ道は、大きな迷路へと化した。
途中までは、かろうじて行けたのだが目の前には三つの道が延びていた。
急いでスマホでマップを開くのだが、そもそも方向音痴がマップを正確に読める訳がない…
(絶対こうなると思って、早い時間の電車に乗ったのに…)
スマホを回転させて自分が今どっちを向いているのかを確認しようとするのだが、どっちに向けてもわからない…
遅刻することを覚悟する私に声がかかる。
「あの、もしかして同じ高校の人ですか?」
この世の終わりのような気分を味わっていた私の視線の先には、同じ高校の制服を着た男の人が笑いを堪えているような様子で映っていた。
少し戸惑いながらも、「はい、新入生なんですけど、道がわからなくて…」と私は藁にもすがる思いでその人に話した。
すると、「俺も同じで新入生なんだけど…よかったら
一緒に行く?」と彼は笑いを我慢でかなかったのか、吹き出しながらいってくれた。
同じ高校の同じ新入生がいたことにとても安心した一方で…
「なんで笑ってるんですかっ!」とその人に声をかける。
「ごめん、ごめん、」とまたもや笑いながら近づいてきたその人に警戒心を持った目で見つめると…
「いや、朝の電車で間違えて音楽を大音量で流してた人が、道のど真ん中でスマホを回転させながら顔をコロコロ変えてて…」
「うそ、もしかしてずっと見てたんですか?!」
さっきの警戒心は薄れ、彼の”笑い”の意味を理解する。そして一気に羞恥心が襲う。
「忘れてくださいっ!」自分でもわかるくらいに顔を赤くしながら私は彼へ声をかける。
「よし、学校まで俺が送っててあげよう。」
彼は私の声を無視したかのように、屈託のない笑顔を顔に浮かべながら、私が迷っていた3方向の道の真ん中の道に進んでいく。
少し怒りながらも私は彼の後ろをついていく。
「そういえば、名前なんていうの?」
彼の笑いがおさまったところで、私が声をかけると彼は後ろにいた私に目を向けて
「俺は宮脇 奏(かなで)だよ。」
と私の隣に移動しながら言った。
自分の名前を言いながら隣へ来た奏くんを改めて見ると、
(本当に、この人同い年なのかな?…)
着ている制服には同じ色のバッチをつけているので、同じ新入生で間違いないはずなんだけど、、
私がこれまで会ってきた同い年の男の子とは違った大人っぽい雰囲気を、彼は放っていた。
彼の声は、初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしく、自然と安心できた。
初対面の異性に、ここまで気負わず話せたのは初めてだった。
初対面から、こんなにも気軽に話せる異性はこれまで会ったことがない。
背が高く、少し見上げる位置にある顔は、派手ではないのに目を引いた。
雑誌で見るモデルや、アイドルにも引けを取らないくらいの美貌を持っていることは確かだと思う。
さっきまでは恥ずかしさで気が付かなかったけど、、
結構カッコいい人と一緒に歩いているんだな…
ふと我にかえって彼を見直すと、
自己紹介した後に私が何も話さないことを不思議そうにしながら彼はこちらを見ていた。
「わたしは、宮野 萌音です!」
慌てて私は自己紹介をする。
「……っ!」
私の名前を聞いた途端、一瞬だけ彼は嬉しそうな悲しそうな笑みを浮かべた。
まだ眠気が残るまま洗面台へ向かう。冷たい水で顔を洗って、一気に眠気がさめる。
そして、何度も夢に見た、新品の制服に腕を通していく。
鏡に映る見慣れない服を着た自分を見ながら、制服のしわを少し整え鞄を手にとり玄関へ向かう
「萌音、いってらっしゃい。」
玄関の棚から新しいローファーを手に取った時、後ろから叔母の紗智子(さちこ)さんが声をかけてきた。
私は新品で少し硬いローファーをなんとか履き、後ろを振り返って笑顔で「いってきます!」と声をかけながら玄関のドアを開けた。
外へ一歩出ると、まだ少し寒さが残る春の風が吹きかけてきた。
上を見ると風で舞っている桜の花びらと共に真っ青な空が水平線まで広がっている。
(今日はいい日になりそう!)
そんな春の空気を吸って一呼吸してから、最寄駅へと足を進めた。
10分ほど歩いて行くと駅に着く。改札を通り、スマホの電車アプリで自分が乗る電車を確認し間違えないように気を付ける。
ホームに着くと、時間が早いからか、人はいつもよりも多く感じた。
いつもより早い時間だとこんなにも人が多いの?と戸惑いながら狭い隙間を抜けて一番前の車両の乗り場に並ぶ。
駅のアナウンスと共にきた電車を見て私は呆気に取られた。
そこには溢れかえるほどの人、人、人…
自分の想像を遥かに超える人数が、
いつもは広いと思っていた電車に
ぎゅうぎゅう詰めで乗っていた。
(こんなとこにどうやって乗ればいいの?)
一気に私の不安が広がる。
━「まもなくドアが閉まります。危険ですので駆け込み乗車は、おやめください。」
(あっ…!)
ベルの音と共にアナウンスの声がホーム中に鳴り響く。
私は慌てて狭い電車の中に隙間を探して乗り込んだ。
「ドアが閉まります。」
かろうじて間に合い、ほっと息をついた瞬間、ドアが閉まったことでより一層周りの人との距離が近くなった。
(学校に着く前に、人に潰されそう…)
カバンを抱え、ドアと人に板挟みされあまりにも窮屈な電車の中で私はごそごそと、高校の入学祝いに紗智子さんに買ってもらったイヤホンをポケットから取り出し耳につけた。
スマホで音楽アプリをタップし、いつも聴いているプレイリストの再生ボタンをおす。
「♪♬♩」聴き慣れたピアノの音色が耳に入ってきたのだが、、、
あれ、これもしかしてスマホに接続されてない?!
急いでイヤホンをとると、さっきよりも大きな音量で曲が流れていた。
あまりにも静かな電車の中で、ピアノの音色が響き渡る。
周囲の人が私のことを見てうんざりしている気がして、慌てて停止ボタンを押し、顔を赤くしながらイヤホンに接続し直した。
満員電車で間違って曲を流してしまい、狭すぎて潰されそうな気持ちに追い打ちをかけるかのように、恥ずかしさでいっぱいになってしまった。
(初日からこんなにもダメダメなのって、悲しすぎる…)
これから電車に乗るときはしっかりと接続されているか確認してからつけようと心の中で強く誓った。
ようやく人が少なくなってきて、椅子に座ることができ、一安心したのでカバンから本を取り出し読み始める。
本を読み進めていくうちに、これからの高校生活がどんなものになるのか想像していく。
(友達を頑張って1人でも作ろう!)
それがわたしにとって、高校生活での大きな目標だった。
「まもなく⚫︎⚫︎駅⚫︎⚫︎駅です。お忘れ物がないようお気を付けください。」
アナウンスで、ようやく自分が降りる駅の名前が呼ばれる。私は急いで本をしまいドアの前にたった。
「ドアが開きます」
アナウンスを聞きながら電車から降りて、改札から一歩出ると、そこには一本の大きな桜の木が立っていた。
(受験をしにきた時は、緊張で周りの風景は目に入らなかったけど、こんなにも大きな桜の木があったんだ。)
桜の香りを感じながら、去年の自分の努力にしみじみする。
紗智子さんに大きな負担はかけたくない一心で、成績上位者には、補助金が配布される学校を探して、寝る間を惜しんで勉強した日々を思い出す。
そうして見事、補助金をもらい入学する高校への道を歩いて行く、、、はずだった、、、
(ここどこ?!!)
方向音痴の私にとって高校までの入り組んだ道は、大きな迷路へと化した。
途中までは、かろうじて行けたのだが目の前には三つの道が延びていた。
急いでスマホでマップを開くのだが、そもそも方向音痴がマップを正確に読める訳がない…
(絶対こうなると思って、早い時間の電車に乗ったのに…)
スマホを回転させて自分が今どっちを向いているのかを確認しようとするのだが、どっちに向けてもわからない…
遅刻することを覚悟する私に声がかかる。
「あの、もしかして同じ高校の人ですか?」
この世の終わりのような気分を味わっていた私の視線の先には、同じ高校の制服を着た男の人が笑いを堪えているような様子で映っていた。
少し戸惑いながらも、「はい、新入生なんですけど、道がわからなくて…」と私は藁にもすがる思いでその人に話した。
すると、「俺も同じで新入生なんだけど…よかったら
一緒に行く?」と彼は笑いを我慢でかなかったのか、吹き出しながらいってくれた。
同じ高校の同じ新入生がいたことにとても安心した一方で…
「なんで笑ってるんですかっ!」とその人に声をかける。
「ごめん、ごめん、」とまたもや笑いながら近づいてきたその人に警戒心を持った目で見つめると…
「いや、朝の電車で間違えて音楽を大音量で流してた人が、道のど真ん中でスマホを回転させながら顔をコロコロ変えてて…」
「うそ、もしかしてずっと見てたんですか?!」
さっきの警戒心は薄れ、彼の”笑い”の意味を理解する。そして一気に羞恥心が襲う。
「忘れてくださいっ!」自分でもわかるくらいに顔を赤くしながら私は彼へ声をかける。
「よし、学校まで俺が送っててあげよう。」
彼は私の声を無視したかのように、屈託のない笑顔を顔に浮かべながら、私が迷っていた3方向の道の真ん中の道に進んでいく。
少し怒りながらも私は彼の後ろをついていく。
「そういえば、名前なんていうの?」
彼の笑いがおさまったところで、私が声をかけると彼は後ろにいた私に目を向けて
「俺は宮脇 奏(かなで)だよ。」
と私の隣に移動しながら言った。
自分の名前を言いながら隣へ来た奏くんを改めて見ると、
(本当に、この人同い年なのかな?…)
着ている制服には同じ色のバッチをつけているので、同じ新入生で間違いないはずなんだけど、、
私がこれまで会ってきた同い年の男の子とは違った大人っぽい雰囲気を、彼は放っていた。
彼の声は、初めて聞いたはずなのに、どこか懐かしく、自然と安心できた。
初対面の異性に、ここまで気負わず話せたのは初めてだった。
初対面から、こんなにも気軽に話せる異性はこれまで会ったことがない。
背が高く、少し見上げる位置にある顔は、派手ではないのに目を引いた。
雑誌で見るモデルや、アイドルにも引けを取らないくらいの美貌を持っていることは確かだと思う。
さっきまでは恥ずかしさで気が付かなかったけど、、
結構カッコいい人と一緒に歩いているんだな…
ふと我にかえって彼を見直すと、
自己紹介した後に私が何も話さないことを不思議そうにしながら彼はこちらを見ていた。
「わたしは、宮野 萌音です!」
慌てて私は自己紹介をする。
「……っ!」
私の名前を聞いた途端、一瞬だけ彼は嬉しそうな悲しそうな笑みを浮かべた。
