冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 こうして予定よりも一時間ほど遅れて、新たな会場で婚礼の儀式が行われることとなった。
 青い空に珊瑚礁の広がる青い海。白い砂浜に、椰子の木。ハイビスカスの花。
 南洋の孤島には十人の神々が集まり、新郎新婦を祝福していた。
 新郎は長い青髪に銀の目をした絶世の美男子。
 新婦は薄桃色の髪を靡かせた可憐な美少女。
 二人は眩しい日差しの下、誓いの口づけをそっと交わした。
 ゴーン、ゴーン。
 教会の鐘が鳴り、空には鳩が勢いよく飛び立っていく。
 その様子を、海神皇は優しく目を細めて見守った。
「冷徹とまで言われた海神皇殿も変わられたものじゃ」
 神父役を務める白い顎髭の神がポツリと呟く。
 その言葉に、海神皇は、春の日差しのように暖かな笑みを浮かべてこう言った。

「俺の心の氷は人魚姫が溶かしてくれたよ」