冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

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 珊瑚たちは扶桑に案内され、彼の故郷の南の島にやって来た。
「うわあ、素敵な島……!」
 珊瑚は目をきらきらと輝かせた。
 青い海に白い砂浜。椰子の木に赤い扶桑(ハイビスカス)の花が素敵な無人島には、小さな白い教会が一つ建っていた。
「海底の神殿はあの怪物に壊されちゃったし、ここで式を挙げるって言うのはどう?」
「ええっ、良いんですか?」
 珊瑚がぴょんぴょんと跳ねながら喜んでいると、海神皇もうなずいた。
「うむ。珊瑚が良いのなら、俺は別にかまわない」
「じゃあ決まりだね」
 そう言うと、扶桑は指をぱちんと鳴らした。
 とたん、珊瑚の白無垢が純白のウエディングドレスにふわりと変わった。
「わあ……可愛い!」
 最高級のシルクと繊細なレースを贅沢にあしらったドレスに、珊瑚の胸がときめく。
「こっちのほうが、ここの教会に合うでしょ? 本当はお色直しにプレゼントしようと思っていたんだけど」
「すごく素敵ですっ……! ありがとうございます!」
 珊瑚が頭を下げていると、いつの間にかタキシード姿に変わった海神皇がちらりと亀子の背中を見た。
「それは良いのだが……こいつはどうする?」
 海神皇の視線の先には、人間の姿に戻ったものの未だ目の覚めない瑠璃の姿があった。
「ま、子守唄で寝てるだけみたいだし、そのうち目を覚ますでしょ。後のことはあの子にやらせようよ」
 扶桑が背後の椰子の木に視線をやる。
 ぎくりと身を震わせたのは、椰子の木に身を隠してこちらを伺っていた玉姫だ。
「そうだな」
 海神皇が血も凍るような視線を玉姫に向ける。
「ひっ!」
 玉姫は慌てて瑠璃を回収すると、どこかへ姿を消してしまった。
 恐らく記憶を消し、元いた村に返すのだろう。
「……あいつは十二神の座を剥奪だな」
 海神皇が苦々しい顔で呟く。
「まあまあ、それよりも早く、式の準備を始めよう!」
 扶桑の言葉に、珊瑚も海神皇もうなずく。
「ああ」
「急がないと、ですね……!」