冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

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 (なっ……何であんなところに珊瑚がいるのよ!? 海の神の生贄になったんじゃないの!?)
 瑠璃はぎりりと歯を噛みしめた。
 珊瑚は瑠璃が三歳のころに家にやって来た。
 父親が海で拾って来た子供で、海水に触れると足に魚の鱗のようなものが現れるのだという。まるで妖怪だ。
 そんな不気味な子供、捨ててきてと母親も瑠璃も主張したのだが、父親はひょっとしたら神の使いかもしれない。もし捨てたら家に何か不幸や何か祟りがあるかもしれないと言って、結局我が家で引き取ることになった。
 だけれど、珊瑚は海水に触れないから漁も手伝えないし、役立たずで不気味なのに貧しい家のご飯を消費してしまう。
 おまけに外見が良いおかげか、村の男たちは瑠璃よりも珊瑚をちやほやするので、瑠璃はいつも不満だった。
 (何よ、不気味な妖怪のくせに――!)
 次第に瑠璃は珊瑚を疎ましく思うようになった。
 そんなある日、父親が魚を売りに出かけた先の町で一冊の本を見つける。
 その本には「人魚を食べると不老不死の力が手に入る」と書かれてあった。
 瑠璃は永遠の若さに惹かれた。だがそれよりもその本を熱心に読んだのは、珊瑚を拾ってきて家で育てようと言い出した父親だった。
 「人魚の肉さえあれば、大金が手に入るぞ」
 金に目がくらんだ父親は、村長に「嫁入り」の名目で珊瑚を売ることを決意した。
 人魚の肉が手に入らないことは残念だったが、おかげで瑠璃の縁談のための持参金も手に入った。
 すべてが順調に上手くいくかと思われた。だが――。