冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 点と点がつながる感覚に、珊瑚の背筋がぞっと寒くなる。
 (もしかして私……人魚なの?)
「まあ、お前が人魚かどうかはこれからじっくりと確かめさせてもらうよ。なんでも人魚の肉を食べると不老不死になれるそうじゃないか。料理して食ってみれば一発で分かる」
 男は胸元から刃物を取り出し、舌なめずりをする。
「い……いやああああああああっ!」
 珊瑚は声の限り叫んだ。
 珊瑚の声は超音波のように辺りに響きわたり、がたがたと戸口が揺れる。
「くっ……何だこの声……耳が!」
 男は片膝をつき、その場にうずくまった。
 (今だっ……!)
 珊瑚は一瞬の隙をつき、屋敷の外へと出た。

 (どういうこと……私は人魚なの? お父様とお母様は……このことを知っていたの?)
 はっと気が付くと、珊瑚は浜辺にいた。
 空にはぽっかりと浮かぶ金細工のような三日月。波音が静かに青黒い浜辺に響いている。
 遠くからは、自分を探すような声が微かに聞こえた。
 (どうしよう……無我夢中で走ってたら海に来ちゃったけど……)
 その時、珊瑚の脳裏に浮かんだのは男の言葉だった。
 『お前は人魚なんだよ』
 (そんな……わけ……私が人魚なわけ……)