冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 着いてきてほしいところとはどこだろう。
 不思議に思いながら珊瑚が付いていくと、海神皇は廊下の突き当たりにある茶色い木戸を指さした。
「ここだ」
「ここ……ですか?」
「ああ。神通力で帝都につなげてある」
「帝都!?」
 帝都と言えば、この国の首都だが、珊瑚にとっては夢物語でした聞いたことのないような大都会だ。
 珊瑚がしり込みしていると、海神皇がそっと珊瑚の肩を抱いた。
「……大丈夫だ。俺がついている」
「は、はい」
 なおも不安そうな珊瑚の横で、海神皇はそっと右手を上にあげた。
 瞬間、珊瑚の髪の色が元のように黒く変わり、海神皇も黒い短髪に黒い瞳に変わった。
「海神皇様……!?」
「せっかくだから、服も洋装にしておくか」
 珊瑚が口をパクパクさせていると、海神皇がまたもや手を一振りした。
 とたん、珊瑚の服が鮮やかな赤いワンピースに変化した。
「わあ……!」
 スカートなどはいたこともない珊瑚は目をぱちくりさせて驚く。
 (な……何だか足が涼しすぎるっ……!)
「どうだ? 気に入らないか?」
「い、いえ! ただ少しびっくりしてしまって……」
 珊瑚はチラリと海神皇の顔を見た。
 海神皇は3ピースの背広とベストを身にまとい、小さな中折れ帽をかぶっており、すっかり都会の紳士といった装いだ。
 (なんだか違う人みたいで落ち着かないな……)
 そわそわとしてしまう珊瑚に、海神皇はそっと手を差し出す。
「さ、行こう」
「……は、はいっ」
 珊瑚は海神皇の手を取ると、おずおずと戸の向こうへと踏み出した。