冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 十二神の会議から数日が経った。
 珊瑚は青い光のゆらめく部屋で、一人本を読んでいた。
「えっと……うらしまたろう は おとひめさまに もらった たまてばこを――」
 海神皇は昨日から三日間、仕事で城を留守にしている。
 一人で留守番をするのは心細かったが、亀子や亀助もいるし、本もたくさん借りて来たから大丈夫だろう。

 ――コンコンコン。
 すると不意に誰かが戸を叩く音がして、珊瑚は顔を上げた。
「はい?」
 亀子だろうか。
 珊瑚が戸を開けると、そこに立っていたのは玉姫だった。
「えっと……玉姫様?」
 珊瑚が戸惑っていると、玉姫はにこりと口元に笑みを浮かべた。
「ええ、そうよ。覚えてくださったのね。光栄だわ」
「あの……何か御用でしょうか」
 珊瑚がおずおずと切り出すと、玉姫はふふんと笑って黒く艶やかな髪をかき上げる。
「嫌だわ、そんなに警戒しないで。私はただ、あなたと仲良くしに来たの」
 玉姫の玉虫色の瞳がきらりと光る。
「仲良く……ですか?」
「ええ、私は海神皇の幼馴染なの。だから婚約者であるあなたとも仲良くしておきたいの」
「幼馴染……なのですか?」
「ええ。だから彼のことは私が一番よく知っているわ。何でも聞いてちょうだい」
 玉姫は笑みを浮かべ、胸を張った。