冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 次に扶桑が勢いよく手を挙げた。
「はいはーい。珊瑚さんに聞きたいんだけれど、海神皇様のどこが良くて結婚するの?」
「どこが良いとは失礼な……」
 と海神皇はぶつぶつ呟きながらも珊瑚のほうをじっと見つめている。
「えっ……えと……海神皇さまは……とても優しいですっ……」
 珊瑚がつっかえながらもか細い声でなんとかそう言うと、海神皇は顔を真っ赤にして横を向いた。
「別に……優しいわけではない。お前が頼りなさそうに見えるから、つい世話を焼きたくなるだけだ」
「お似合いの二人だね♪」
 扶桑は手を叩いて喜ぶ。
「細かいことは良いだろう。早く決議を」
 海神皇は耳の辺りを赤く染めながらも十二神に促す。
 決議の木札が投票箱に入れられ、結果、十対一の賛成多数で海神皇の婚姻は十二神に認められた。

 (十対一……かあ)
 珊瑚はなんとなく、誰が反対の一票を入れたのか分かってしまった。
 (あの方……玉姫さん、綺麗な女神様だったな。もしかしてあの人……)
 もしかして玉姫は海神皇のことが好きなのかもしれない。
 考えれば考えるほど、二人は神様同士だし、美男美女だし、自分よりずっとお似合いに思えてくる。
 どうして海神皇は玉姫ではなく、会ったばかりの自分を妻とするのだろう。
 珊瑚がうつむいていると、海神皇が珊瑚の背中を抱いた。
「どうした。十二神の承認も得られた。何か不満でもあるのか?」
「い、いえっ、なんでもありません」
 珊瑚は必死で笑顔を作った。
「その……一票だけ反対票が合ったじゃないですか? だから気になって……」
「ああ、それは恐らく玉姫だろう」
 海神皇はしれっとした口調で言う。
「彼女は昔から俺のことが嫌いなのだ。だから嫌がらせのつもりなのだろう。それだけのことだ。珊瑚の気にすることではない」
「はい……」
 珊瑚はこくりとうなずいた。
 だけど、心の底では、玉姫のことが気になって仕方がなかった。
 (違う。嫌いなわけじゃない。あのひとはきっと――)
 珊瑚は胸がちくりと痛むのを感じた。