冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 やがて十二人の神々の待つ会議室が見えてきた。
 漆塗りの黒い扉を開けると、丸い机に十二人の神々が座っているのが見えた。
 黒い肌や茶色い肌の神、魚の鱗を持つ神に、ゆったりとした微笑をたたえた鯨の神。
 いかにも荒くれ者と言った様子の竜の神に、月影のように真っ黒な海蛇の神。
 頭にイソギンチャクを付けた深海魚のような神など、その姿は様々だった。
 珊瑚はその中でも一人の神様に目が行った。
 褐色の肌に黒い髪。青い目をして赤い花の服を着た神――扶桑だ。
 (扶桑さんも十二神のうちの一人だったんだ……!)
 扶桑はにこにこと珊瑚と海神皇に手を振っている。
 珊瑚がぺこりと小さく会釈を返すと、誰かにギロリと鋭い目つきで睨まれた。
 見ると、黒い髪に蝶の髪飾りをつけた女神――ここに来たばかりの時に入り口で出会った玉姫がこちらを睨んでいる。

「遅れてすまない。我が妻、珊瑚を連れて来た」
 海神皇の説明に、珊瑚はぺこりと再び頭を下げた。
 「ほう」「美しい」「人魚だそうだな」「珍しい」など、神々が様々な声を上げる。
 だが豊姫だけは一人険しい顔をして珊瑚を睨みつけている。
 すると、白い肌に白い着物、白く長いあご髭を生やした老人が手を挙げた。
「海神皇様はその娘のどこに惚れたのですか?」
「そうだな……可憐で純粋なところだ」
 遠慮がちに語る海神皇の姿に十二神の間にどよめきが走る。
 海神皇が女性のことを誉めるなど今まで見たことが無かったからだ。