「うん。他にも興味のある本があったら言ってね。字の読み方も、もし分からなければ教えるし。そうだ、雑誌はどう? ここでは帝都から新聞や雑誌も毎日取り寄せているんだ。だから僕もたまにこうして覗きに来るんだよ。面白いからね」
(新聞や雑誌……かあ)
珊瑚にとっては難しいが、読めるようになれば、海の底にいても世の中の動きが分かり、楽しいかもしれない。
「これなんかどう? 女の子向けだし難しくないよ」
珊瑚は青年の薦めてくれた少女向け雑誌を手に取った。確かにこれなら絵が多いから読めるかもしれない。
「はい、ありがとうございます!」
珊瑚は青年にお礼を言うと、魚の図鑑と人魚姫の絵本、帝都の流行りを扱った少女向け雑誌、それに字を学ぶための漢字辞典を手に図書室を出た。
「あ、そういえば」
部屋に戻る途中、珊瑚はふと呟いた。
「あのかた、名前を聞きそびれちゃった。あの人も神様なのかな?」
そう言うと、亀子が教えてくれる。
「ああ、あの方は扶桑様ですよ。海神皇様のご友人です。海神皇もお美しいですが、扶桑様も美男ですよねぇ」
珊瑚はびっくりして亀子のほうを見た。
「そうなんですか。あの方があの南国のお茶をくれた……」
「はいそうです」
「そうなんですね……お礼、言えばよかったです。あのお茶、美味しかったですし、飲んだら疲れもとれましたし」
珊瑚はしゅんと下を向いた。
「それならまた今度、会った時にお礼を言いましょう」
亀子が慰めてくれる。
「うん、そうするね」
珊瑚はうなずいた。
(同じ城にいるのなら、きっとまた会える……よね)



