冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

「あの、助けてくださりありがとうございます」
 珊瑚がぺこりと頭を下げると、亀子はにこりと人のいい笑みを浮かべた。
「いえいえ、珊瑚様は海神皇殿下の奥様なのですから、奥様らしく、もっと堂々となされていればいいのですよ」
「奥様らしく……」
 そう言われても、珊瑚には海神皇の妻がどんなことをしなければいけないのか分からなかった。
「あの、奥様らしくと言われても、いったいどのようなことをすればいいのでしょうか」
 珊瑚の言葉に、亀子も「うーん」と首をひねる。
「海神皇殿下の妻には特には仕事はないと思いますので、好きなことをして過ごしてくださって結構ですよ。もしよろしければ、読書でもなさいますか? この城には図書室もあるので、気になる本がありましたら持ってきますよ」
「本……ですか」
 珊瑚は戸惑った。
 買い物で使うような簡単なひらがな程度ならばなんとか読めるが、本など読んだこともない。
 (でも……海神皇様の奥さんなのに文字もろくに読めないなんて恥ずかしいわよね)
 そうだ。字を勉強しよう。魚や海のことももっと知らないと。

「では、私を図書室に連れて行ってください」
「はい、かしこまりました」
 亀子に連れられ、珊瑚は城の最下層にある図書室へとやって来た。
「わあ……!」
 円形のへやには壁一面に本が並んでおり、まるで巻貝の中にいるようだ。
「綺麗……」