冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 真新しい畳に、ゆらゆらと蒼い海の光が揺れる。
 海の上に眩しい朝日が昇る頃、珊瑚はゆっくりと目を覚ました。
 どうやら少し横になって休むつもりが、いつの間にかぐっすりと眠っていたらしい。

 (ここは……そうだ、海神皇様のお城だっけ)
 珊瑚は窓の障子を開け、青や桃色、黄色の鮮やかな色をした魚が泳ぐのをじっと見つめた。
「夢じゃない……」
 自分が海の神の妻になって海底のお城に住むだなんて、まだ信じられない。
 珊瑚が信じられずに自分の頬を引っ張っていると、戸を叩く音がし、がらりと扉が開いた。
「珊瑚、起きたか」
「ふぁい、ふぁいふぃんふぉうふぁふぁ(はい、海神皇さま)」
 珊瑚が頬をつねったまま返事をすると、海神皇が怪訝そうな顔をした。
「何をやっている?」
「……だって、夢じゃないかと思って」
 珊瑚が痛む頬を押さえながら返事をすると、海神皇はそっと珊瑚の頬に指を伸ばした。
 ……ぷに。
 海神皇の白くて長い指が珊瑚の頬に沈んでいく。
「……餅みたいだな」
 ふにふに。
 両手で珊瑚の頬をつねる海神皇。
「ひゃあへへひゅひゃやひぃっ」
 珊瑚が頬をつねられたまま返事をすると、海神皇は先ほどまでの冷たい美貌を緩め、目を細めて笑った。
「ふふ」
 (あ、笑った……)
 いつも不愛想な海神皇の笑顔に、何だか珊瑚まで嬉しくなる。
「どうした」
「いえ、海神皇様が笑ってるなって」
「おかしな娘だ」