冷徹な海神は人魚姫に心の氷を溶かされる

 色とりどりの絹や蒔絵で彩られた美しい廊下を通り抜けると、金の彫刻で飾られた豪華な部屋が見えてきた。
 亀助はその隣にある少し質素な檜細工の部屋を指さした。
「着きましてございます。少し手狭ですが、海神皇様の近くのお部屋がよろしいかと思い、隣の宝物庫を改装させていただきました」
「うむ、構わない」
 そう言うと、海神皇は亀助を下がらせ部屋の戸を開けた。

「わあ……っ!」
 珊瑚は部屋の中を見て目をきらきらと輝かせた。
 真新しい畳の敷かれた部屋は、こざっぱりとしていて埃一つなく、檜の良い香りがした。
 棚や鏡といった調度品も、派手さはないものの、どれも品の良さがにじみ出ている上物に見える。
 部屋の中央には、ふかふかとした真新しい布団が敷かれていた。
 窓際の障子を開けると、ひし形の窓から青い海と色とりどりの魚たち、それに美しい珊瑚礁が見えた。
「えっ? これ……どうなっているのですか?」
 珊瑚は恐る恐る窓に触れてみた。どうやら透明な板がはまっているようで、海水には触れられなかった。
「ここには硝子(がらす)がはまっている。神の力で世界中の海とつながっているから、世界中好きな場所、好きな時代の海を見ることができるのだ。今は南国の海にしてあるが、気に入らないのであれば他の海にもできるぞ」
「いえ、この海で構いません……とても綺麗です……」
「そうか」