特別の、その先

 side 高槻①

 初めて浅見としゃべった時、一度も目が合わなかった。
 入学して間もないころ、クラスの男子と連絡先を交換した。その時に、近くにいた浅見にも連絡先を聞いた。

 「俺、高槻秋人。よろしく」
 「浅見です。浅見湊」

 長めの前髪のせいで目がよく見えない。俺より身長も低いから目線も合わない。声も小さいし華奢で色白。第一印象は、なんか弱そう。

 「秋人ってことは、秋生まれ?」

 スマホの画面を見ながら俺に聞いてきた。

 「そうそう。11月」
 「へぇ~。11月って少し寂しい感じするよね」
 「まぁ、特にイベントとかないしな」
 「俺は好き。季節の中で一番好きかも」

 それだけだった。俺のことが好きだと言われたわけでもないのに、妙にうれしかったのを覚えている。なんだか気になって、気づいたら目で追っていた。

 休み時間になると、浅見はいつもスマホとにらめっこしている。難しい顔をしてずっと画面をスクロール。株取引でもしてるのかと思うほど真剣な顔をしているので、話しかけられずにいた。

 ある日の昼休み、廊下で浅見をみつけた。疲れた様子でふらふらとどこかに向かっていたので、気になって後をつけると、きょろきょろと周りを警戒しながら廊下の端にある扉を開けて外に出て行った。その扉の先はどこへ続いているのか、俺も気になって扉を開けるとーー

 「うわっ!」

 ぶわぁっと春の風が舞い込んできて、おもわず目をつむる。次に目を開けて視界に飛び込んできたのは太陽の光。眩しくて、手をかざしながら外に出ると、非常階段に続いていた。たぶん、浅見はこの上だ。俺は上を見上げて様子をうかがう。特に話し声や音も聞こえない。一人で階段を上っていったんだろう。俺も上に行こうかと一段目を上ったところで足を止めた。さっきの浅見は疲れているようだった。外気はあたたかくぽかぽかしていて昼寝にはもってこいの気候だ。俺は踵を返し、校舎内へ戻った。