特別の、その先

 まずは映画館に行った。二人でみたいねと話していたアクション映画。抱えるくらい大きなポップコーンとコーラを買って、最後尾の席に座る。『スマートフォンをマナーモードにするか電源をお切りください』というアナウンスが流れて、俺は慌てて電源をきった。

 「浅見、ちゃんと電源きるんだ」
 「うん、邪魔されたくないしね」
 「確かに……今日はずっと電源きりっぱなしでいいんじゃない?」
 「え?」
 「いや、なんでもないです。俺も電源きろーっと」

 館内が暗くなり上映が開始された。毎度おなじみの映画泥棒のCMが流れて、コミカルな動きに思わずふきだしてしまう。隣をみると、高槻も同じように笑っていて、それだけでちょっとうれしくなった。
 ストーリーは、元殺し屋の男がラーメン屋を開き、その店にお客として次々と刺客が襲い掛かってくる。刺客だが、一応お客なので、店主は攻撃をよけながら素早くラーメンを作り、レンゲやザルやコショウなど店内にあるものを使って攻撃し、できたてのラーメンを提供するという内容。スピーディーな展開に動きもコミカルで、気楽に楽しむことができた。笑いのツボが浅い高槻は、終始笑い声をあげていた。

 昼を回り、なにを食べるか散々迷って、適当に雰囲気のいいカフェに入った。メニューを開くとおいしそうなものがずらりと並んでいる。
 
 「うまそうじゃん。浅見、どれにする?」
 「う~ん、パスターー」

 言いかけてハッと気づいた。パスタはニンニクが入っていたり、チーズが入っているものがある。つまり、食後に口の匂いが気になる。もしキスする流れになったら最悪だ。頭の中でそれを導き出した俺は、パタンとメニューを閉じた。

 「サラダセットにする」
 「え、あんまりお腹すいてない?」
 「うん、さっきポップコーン食べ過ぎたみたい」

 はははと乾いた笑いを浮かべる俺を、不思議そうにみる高槻。気まずくなって、喉も乾いていないのにコップに手を伸ばし、水を飲んだ。

 (べつにキスするって決まったわけじゃないから気にしなくていいんだけど、何事も備えあれば憂いなしっていうし……)

 高槻が注文したオムライスを、チラチラと横目で見る。卵がふわふわでデミグラスソースのいい匂いがする。湯気までおいしそうだ。その匂いをおかずにして、いろんな種類の葉っぱをウサギのようにむしゃむしゃ食べた。

 (俺も食べたかったな、パスタ……あ、写真撮るの忘れた)

 ▽▽▽▽

 お昼を食べた後、マフラーを見に行った。お互いに相手に似合うものを選ぼうということになって、俺は高槻にさわやかな水色のマフラーを選んだ。優しくてさわやかな水色が、高槻に合ってると思ったから。高槻は俺に、ブルーとグリーンのチェック柄マフラーを選んでくれた。

 「浅見は肌の色が白いから寒色系の色が似合うかなぁって」
 「うん、ブルーもグリーンも好きな色だからうれしい。ありがとう」
 「こちらこそ。俺もこのマフラーみたいにさわやかになれるようがんばるわ」
 「もう十分さわやかですけど」

 高槻は照れたように笑って、マフラーの包みを大事そうにカバンにしまった。