特別の、その先

side 浅見

 文化祭当日、秋の空は高く空気が澄んでいる。少し肌寒い気温だが、文化祭の熱気に包まれて生徒たちはみんなわくわくしている。俺を除いて。

 「あさみー」

 教室の入り口に受付係としてぼんやりとイスに座っていると、田辺がやってきた。地元の友達を二人を連れている。

 「これ、浅見」
 「あ、どうも。浅見です」
 「けんちゃん、”これ”呼ばわりはだめでしょ」
 「いつもけんちゃんがお世話になってまーす」
 「こちらこそ。今、ちょうど空いてるんで見て行ってください」

 三人とも楽し気に教室に入っていった。

 (けんちゃん……田辺はけんちゃんって呼ばれてんのか)

 とても仲がよさそうで、三人で無邪気にふざけ合って笑っていた。田辺は、いつもの気だるげな田辺じゃなく、”けんちゃん”の顔になっていた。

 (今度、けんちゃんって呼んでやろ)

 ドーム型プラネタリウムは直径4メートルほどのもので、定員は10人。解説係が2人入るのでお客さんは8人入れる。真ん中にプロジェクターを設置して、15分間上映する。高槻・宮崎さんペア、青山(クラス委員)・大友さん(宮崎さんの友達)ペアが順に解説を担当する。
 俺はそっと教室の中の様子をうかがう。今、ちょうど田辺たちがプラネタリウムに入ったところだ。この回の解説は、青山・大友さんペアの担当だから、高槻と宮崎さんはプラネタリウムの外で資料をみながら雑談している。楽しそうに笑い合っていていい雰囲気だ。

 (みなきゃよかった……)

 顔を背けて机に突っ伏す。今日何度目かわからないため息がこぼれて、ぎゅっと目をつむった。

 (いいかげん諦めなきゃって思うけど……そう簡単に切り替えらんないよな)

 「すみませーん」

 お客さんの呼びかけに顔を上げる。

 (やば。ちゃんと受付しなきゃ)

 受付係の俺の担当時間は残り30分。それさえ乗り切ればあとは自由だ。あの二人が並んでいる姿を見ずに済む。

 「今ちょうど始まったところなんで、次は10時半ですね」
 「これって予約とかできないんですか?」
 「あ、名前書いてもらって、上映時間に来てもらえれば大丈夫です」

 (今は余計なことは考えずに集中しよ)