特別の、その先

side 高槻

 文化祭前日の夜、俺は風呂上がりにベッドに寝転んで、最終確認としてプラネタリウムの解説原稿を読んでいた。

 「おおいぬ座とこいぬ座は、冬の夜空でオリオン座に従う猟犬たちとして知られています。全天で最も明るいシリウスを持つおおいぬ座が、やや北東に位置するプロキオンを持つ小さなこいぬ座を、まるで兄貴分のように天の川のそばで見守るような配置で輝いています……」

 浅見が保健室で泣いていた日から、俺はなるべく普段通りに浅見に接してきた。浅見の方からなにか言ってくるまで踏み込まず、そばでじっと見守ってきた。だけど、とうとう文化祭が明日に迫っている。

 「浅見……」

 目をつむって頭に浮かぶのは、浅見の泣いている顔。涙にぬれて辛そうにしている。

 心を許してくれていると思っていた。 俺のことを特別だと言ってくれたから。 浅見は軽い気持ちでそんなことは言わない。だからたぶん、浅見の気持ちを変えてしまうようななにかがあったんだと思う。そこに俺は踏み込めない。踏み込んだら、今度こそ本当に拒絶されるかもしれない。

 でも――もう、見てるだけじゃ嫌だ。

 泣いている浅見を前にして、何もできないのがこんなに苦しいなんて知らなかった。

  隣にいたい。頼ってほしい。つらい時に、一番に思い出してほしい。 そのためには、ただの“特別”じゃ足りない。

 浅見には笑っていてほしい。俺が浅見を幸せにしたい。