特別の、その先

side 高槻④ 
 
 浅見に”特別”だと言われた日、俺は浮かれていた。帰り道で近所の犬に吠えられても、ポイ捨てされているバナナの皮に滑って転んでも、いつも言うことを聞かない妹にウザがられても。世界が俺を祝福してくれている気がして、少しくらい嫌なことも気にならなかった。むしろ、この世界にありがとうと感謝したいくらいだ。
 そんな時に宮崎さんからラインがきた。確か、夏休み前に交換して以来だ。文化祭の展示の案について、意見を聞きたいと言われた。

 『人が何人か入れるようなドーム型のプラネタリウムなんてどうかな?』
 『え! めっちゃいいじゃん! きっとクラスの奴らも賛成してくれると思うよ。明日、提案してみたら?』
 『うん。おもいきって提案してみるね! 高槻くんに相談してよかった。ありがとう』

 普段なら、既読無視か短文で返すのに、気持ちが高ぶっていた俺は宮崎さんに即返事をして、ベッドに入った。

 (明日、浅見に会えるの楽しみだな)

▽▽▽▽

 翌日、宮崎さんががんばって展示の案を提案し、クラスメイトの賛成も得て、コンセプトはプラネタリウムに決定した。リーダーも務めることになってしまった宮崎さんは自信がなさそうに後ろを振り返って俺に視線を送る。俺が、大丈夫!とガッツポーズを送ると、宮崎さんは少し安心したように、がんばる!とガッツポーズをした。

 『高槻くん、今日はありがとう。勇気出して提案してみてよかった。リーダーは自信ないけど、自分なりにがんばってみるね!』
 『プラネタリウムに決まってよかったね。宮崎さんすげーよ!応援してます!』

 ▽▽▽▽

 『高槻くん、リーダーを引き受けてくれてありがとう。一人じゃ不安だったからとても心強いです。これからよろしくね!』
 『宮崎さん、大変そうだったもんな。俺でよければなんでもするから、遠慮なく言って』

 ここ数日、宮崎さんとラインをすることが多くなった。普段からそういうやり取りをしてこなかったから、文章を打つのに時間がかかっている。宮崎さんは健気にリーダーとしてがんばってるんだから、俺もちゃんと返さなきゃと思ってラインしてるけど、少し負担に感じる時がある。もしかして、浅見もこんな感じだったのかもしれない。

 (そういえば、交換ノートまだ返ってこないな。最近、浅見ともまともに話してないかも……)

 ベッドに寝転んで、スマホをタップして浅見の連絡先を表示した。

 (通話してみる? 顔をみて話したいからできればビデオ通話がいいんだけど……用もないのに急にかけたらびっくりするよなー)

 ベッドでゴロゴロしながら悩んでいたら、いつの間にか寝落ちしていた。