特別の、その先

 非常階段で高槻に出くわして以来、俺はあそこに行っていない。あの場所は俺にとって一人になれるところだったから、もし高槻に会ったらと思うと気まずい。

 高槻とは、連絡先は交換しているけどほとんど話したことがない。クラスでは、分け隔てなくみんなと仲がいい印象だ。だから、高槻があそこに来て一人の時間を過ごしていることが意外だった。

 「浅見!」

 体育が終わり教室に戻る途中、高槻に話しかけられた。

 「もうあそこには行かないの?」

 なにに気を遣っているのか、小声で話している。

 「行かない」
 「なんで? 俺がいたから?」

 そうだよ、と言いたいところだけど、高槻が気にしてはいけないので口を噤む。高槻はなにも悪くないから。

 「気にしなくていいのに、って、こんなこと言われても気にするよな~」

 腕を組み、う~んと唸りながらなにかを考えてる。

 「……じゃあ、俺はもうあそこには行かない」
 「え? なんでそうなんの?」
 「ってことで、浅見も好きなようにしな」

 じゃあ、と軽く手を振って行ってしまった。

 (やっぱ変な奴だ)