特別の、その先

 「最近さ、つき合い悪くね?」
 「え?」

 1時間目が終わった後の休み時間、クラスの陽キャ・神崎滉人が俺に話しかけてきた。

 「おまえら三人、クラスのグループトークにも参加してないし、夏休みの集まりも来なかったじゃん」
 「あー……それは、たまたま用事があったから」
 「たまには参加しろよな。せっかく同じクラスなのに寂しいじゃん」

 そう言って、神崎は仲のいいクラスメイトのところへ戻っていった。
 そういえば、ここ最近、クラスのグループトークを開いていない。慌ててスマホを確認すると、未読が1000件以上たまっていた。

 (やばっ……すっかり忘れてた)

 鬼スクロールしながらグループトークを流し見していたら、トイレに行っていた高槻と田辺が帰ってきた。

 「浅見、あのさーー」
 「え? なに?」

 高槻に話しかけられたけれど、視線はスマホをみたままで返事をした。昨日から、まともに高槻の顔がみれない。直視するとドキドキして、どうしたらいいかわからなくなるからだ。

 「放課後、空いてる? 久しぶりに、あそこいかない?」

 あそこーーきっと、非常階段のことだ。あそこにいくと自動的に二人きりになってしまう。そうなるとますますドキドキしてしゃべれなくなる。変に思われたらどうしよう、とか。今までみたいに話せなくなったらどうしよう、とか。——このまま、関係が壊れたらどうしよう、とか。
 俺は頭をフル回転させて、断る理由を考える。ふと、グループトークが目に留まった。今日の放課後、陽キャたちが集まってカラオケに行くらしい。俺は衝動的に、『俺も参加していい?』とグループトークに送ってしまった。するとすぐに、『いいよ』『了解』『浅見、めずらしいね』と返信が来た。

 「あ、ごめん。今日、カラオケ行くから……」

 グループトークの画面を高槻にみせる。

 「え、浅見そっち行っちゃうの?」

 残念そうに眉を下げる高槻。その顔をみたら良心がズキズキと痛む。

 「……なんか、最近そういうの行ってないし」
 「え、浅見、カラオケ苦手じゃん」

 すかさず田辺が話に入ってきて、余計な一言を言った。

 「いや、そんなこともないけど……」
 「クラスの最初の集まりのとき、めっちゃヒマそうにしてただろ」
 「あれは……空気に慣れてなかったから」
 
 高槻が心配そうにこっちを見ている。

 「無理していかなくていいって」
 「まぁ……嫌になったら適当に理由つけて帰ってくるから」
 「やっぱ無理してんじゃん」
 「……えっと、うん。大丈夫。大丈夫だから」

 心配する高槻からの視線に耐えられなくて、俺は席を立ち、用もないのに廊下に出て、ふらふらと歩き始める。

 (なんで勝手に気まずくなってんだよ、バカか。高槻はなにも悪くないのに……)