特別の、その先

 side 高槻②

 がやがやとあちこちで電子音が聞こえ、そこに人の話し声もたくさん混ざっている。そんな喧騒の中、俺は白猫のマスコットキーホルダー・みゃーちゃんと睨み合っていた。みやーちゃんはかわいくウィンクしているので、睨んでいるのは俺だけなんだけど。

 「…………よし! いきます!」

 深呼吸して精神を統一し、最後の百円玉を機械に投入した。まずは十字キーを左右に動かす。みゃーちゃんの現在地を確認しながらミリ単位で位置を調整する。

 「ここだ!」

 そして十字キーを奥に動かす。

 「あ、もうちょい奥」

 横から田辺に位置を確認してもらいながら、慎重に調整する。

 「オッケー。その辺でいいと思う」

 自分でも横からみて、位置がずれていないか最終確認。

 「よし!完璧!」

 自信を持って最後のボタンをおもいっきり押した。

 「いっけー!」

 あとはクレーンの動きを見守るのみ。クレーンはゆっくりと下降し、ぬいぐるみの山の中へザクッと爪を突き立てる。そしてクレーンが閉じて、またゆっくりと上昇していく。

 「あっ!」

 クレーンの閉じた爪の中に一匹のみゃーちゃんが入っている。

 「よっしゃ!」

 その状態のままゆっくりとこちらへやってくる。ーーが、途中で爪の隙間からみゃーちゃんがポロっと落ちて、ジ・エンド。俺はその場に崩れ落ち、浅見が俺の背中を優しくなでて慰めてくれている。

 「なんか違うの取れてんだけど」

 田辺が商品取り出し口から拾ったそれはーー

 「トラネコの又三郎……」

 白猫みやーちゃんの友達で、法被を着てふんどしを履いている。又三郎もウィンクしているが、目に傷があるのでこいつの場合は隻眼なんだろう。

 「又三郎、しぶっ。かっけーな」

 田辺が俺に手渡してきた。

 「浅見、ごめん。みゃーちゃん取れなかったけど……」

 おずおずと浅見にわたすと、浅見はふるふると首を振る。

 「高槻ががんばって取ったのに、もらえないって」

 遠慮する浅見の手に又三郎を握らせる。

 「浅見のために取ったから、もらってほしい」

 浅見は俺と又三郎を交互にみて、ぎゅっと大事そうに又三郎を両手に抱いた。

 「……じゃあ、ありがとう」

 浅見がわずかに頬をゆるめ、俺は満足して浅見の頭をぽんぽんする。財布の中身は空っぽになったけど、浅見がよろこんでくれたならそれでいい。……明日から昼飯どうしよう。