特別の、その先

 高校に入学してから三か月が経とうとしている。入学祝に買ってもらったスマホにはたくさんのアプリをインストールした。生活のほとんどが、スマホの中に入っている。中でも一番よく使うのが、SNSとメッセージアプリ。一日に何回もチェックして反応を返す。通知が鳴りやまないので通知音はオフにしている。

 スマホを使い始めた頃はワクワクしていた。連絡が来るだけでうれしくて、意味もなく画面を開いてた。SNSを通じて友達のことを知れるのもうれしかった。でも今は、返すのが遅れないように、いい感じの言葉を探して——なんだか、試されてるみたいだ。
 せっかく新しくできた友達とは仲良くしたい、クラスにもなじんで自分の居場所を確保したい。最近はそんなことばかり考えて、みんなとの交流を楽しめていない。
 けれど、通知は止まらない。おいていかれないよう、必死に画面をスクロールしてチェックする。

 (……だめだ、ちょっと休憩)

 昼休み、SNSのチェックに疲れた俺は席を立ち、トイレに行くと言って教室を出た。

 廊下の端まで来ると、誰にも見られないようそろっと非常階段への扉を開ける。音がしないようにそっと閉めて、ゆっくりと階段を上がった。

 「わぁ……」

 眼前に広がるのは、たくさんのビル、住宅、お店、公園。この学校は小高い丘の上に建っているので街が一望できる。本当は立ち入り禁止だけど、どうしても一人になりたいときはここに来る。晴れた日は風が涼しくて気持ちがいい。

 「屋上だともっと眺めいいんだろな」

 本当は屋上に行きたいけど鍵がかかっていて行けない。
 ふぅ、と一息ついて、ポケットからスマホを取り出す。カメラアプリを起動した。画角に街の景色を収めて何枚か写真を撮る。撮った写真を開いてチェック。

 「……いいな、これ」

 今日は天気がいいから青空をバックにして撮ることができた。街の向こうには、ほんの少し海も映っている。俺は満足して、写真をイムスタにアップした。

 スマホを持ち始めてから、写真を撮る楽しさを知った。自分がいいと思った日常の風景をすぐに撮って保存できる。あとで見返していると癒されるし、イムスタで共有していいねがつくとやっぱりうれしい。イムスタは俺だけの世界にしておきたいから、アカウントは誰にも教えていない。だから、通知がつくこともめったにないけど、その分いいねがついた時のよろこびは格別だ。

 「俺には、これくらいの速さがちょうどいいのに……」

 呟きながら、スマホ画面に視線を落とす。みるみるうちに増えていくグループアプリの通知に、大きなため息がこぼれた。

 「あ、浅見?」

 不意に名前を呼ばれて驚いて振り向く。そこにはクラスメイトの高槻がいた。