ーー月曜日、寝すぎただるい身体をひきずって学校へ行く。その間も、高槻からの返信があるかもしれないと、電車の中でスマホを何度もみたけどグループトークの通知がたくさん来るだけだった。
教室に着いてカバンを下ろしていると、高槻が慌てた様子でこっちに来た。
「浅見、ごめん!」
「なにが?」
「昨日さ、浅見からのライン出先で気づいて、帰ってから返信しようと思ってたのに寝落ちしちゃって」
「そうなんだ」
「今朝も出かける準備で家族がバタバタしてて機嫌悪くて、タイミング逃した」
本当にごめん! と手を合わせて謝ってくる高槻。
「それにしてもさ、気づいた時点でそうやって送ればいいじゃん。ずっと放置されてたらなんかあったのかなって、気になるし……」
なんか、何度もスマホを開いて高槻からの返信を待ってた俺がバカみたいなんだけど。
高槻は謝ってくれたのに、イライラが募って少し棘のある言い方をしてしまった。
「こいついっつも遅いし、既読無視とか普通だからさ、浅見もあんま気にしない方がいいよ」
田辺が間に入ってくれたおかげで、少しづつ冷静になっていく。
「でもさ、俺らには平気で既読無視なのに、浅見には必死に謝ってんのなに?」
田辺が少し皮肉っぽく言う。
「だって、浅見だから」
高槻は、田辺ではなく俺をまっすぐにみて伝えてきた。俺はどうしたらいいかわからず、視線を下げる。
「なんだそれ? まぁ、いいけど」
田辺はきょとんとするも、すぐに視線をスマホにうつした。
「浅見、ちょっと来て」
ボソッと耳元で言われて、手を引かれて廊下に出た。教室のざわざわが、扉一枚で遠くなる。
掴まれている手が、さっきより強い気がした。
(……”浅見だから”って……なんなんだよ)
さっきまでのイライラとは違う、落ち着かない感じが胸の奥に残っている。
「あそこ、行く?」
少し周りを気にしながら、また耳打ちしてきた。さっきからやたら距離が近い。
俺がそっけなくうなずくと、高槻はどこかうれしそうに含み笑いをしている。そして、いつものように周囲を気にしながら非常階段へ続く扉を開けて、ゆっくりと階段を上がった。
最上階ーーいつもの場所に着くと、高槻はおもいきり伸びをした。そして手招きをされて隣に立つ。今日の空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降りそうだ。
「俺さ、苦手なんだよね。ラインとかSNSとか」
言いながら高槻はポケットからスマホを取り出す。
「口では思ったこと言えるけど、文章になると考えちゃうっていうか」
(あ、俺と同じ……?)
「昨日もさ、本当はすぐ返信しようとしたんだけど、打って消して打って消してばっかしてたらなんかわけわかんなくなって」
思わず、ふっと笑ってしまった。
「え? なに?」
「いや、ごめん。続けて」
少し不思議そうな顔をしてから、またスマホに視線を移す。
「結局、必要最低限の短い返事になっちゃうんだよね」
高槻は友達とのトーク画面を見せてくれた。覗き込むと、短い言葉ばかり並んでいる。
「……高槻ならべつにそれでいいと思う。そういうキャラだって、みんなわかってるし」
高槻は俺の言ったことに納得していない様子で、眉根を寄せた。
「やだよ。浅見にはそんな風にーー返信短い冷たい奴だって思われたくない」
「え? 俺はそんなこと思ったことないけど」
「ほんと?」
「高槻と話したことある人なら、そんな風には思わないだろ」
「よかった」
「俺、浅見とは顔をみてちゃんと話したい……ていうか、できるだけ一緒の時間を過ごしたい……って、俺なに言ってんだろ」
高槻は照れたように笑って、手の甲で口元を隠す。視線が合わない。
(え……)
さっきまでのイライラがどこかに消えて、俺もつられて笑ってしまった。胸の奥が、じんわりあたたかい。うまく言えないけど。……嫌じゃない、と思った。
教室に着いてカバンを下ろしていると、高槻が慌てた様子でこっちに来た。
「浅見、ごめん!」
「なにが?」
「昨日さ、浅見からのライン出先で気づいて、帰ってから返信しようと思ってたのに寝落ちしちゃって」
「そうなんだ」
「今朝も出かける準備で家族がバタバタしてて機嫌悪くて、タイミング逃した」
本当にごめん! と手を合わせて謝ってくる高槻。
「それにしてもさ、気づいた時点でそうやって送ればいいじゃん。ずっと放置されてたらなんかあったのかなって、気になるし……」
なんか、何度もスマホを開いて高槻からの返信を待ってた俺がバカみたいなんだけど。
高槻は謝ってくれたのに、イライラが募って少し棘のある言い方をしてしまった。
「こいついっつも遅いし、既読無視とか普通だからさ、浅見もあんま気にしない方がいいよ」
田辺が間に入ってくれたおかげで、少しづつ冷静になっていく。
「でもさ、俺らには平気で既読無視なのに、浅見には必死に謝ってんのなに?」
田辺が少し皮肉っぽく言う。
「だって、浅見だから」
高槻は、田辺ではなく俺をまっすぐにみて伝えてきた。俺はどうしたらいいかわからず、視線を下げる。
「なんだそれ? まぁ、いいけど」
田辺はきょとんとするも、すぐに視線をスマホにうつした。
「浅見、ちょっと来て」
ボソッと耳元で言われて、手を引かれて廊下に出た。教室のざわざわが、扉一枚で遠くなる。
掴まれている手が、さっきより強い気がした。
(……”浅見だから”って……なんなんだよ)
さっきまでのイライラとは違う、落ち着かない感じが胸の奥に残っている。
「あそこ、行く?」
少し周りを気にしながら、また耳打ちしてきた。さっきからやたら距離が近い。
俺がそっけなくうなずくと、高槻はどこかうれしそうに含み笑いをしている。そして、いつものように周囲を気にしながら非常階段へ続く扉を開けて、ゆっくりと階段を上がった。
最上階ーーいつもの場所に着くと、高槻はおもいきり伸びをした。そして手招きをされて隣に立つ。今日の空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降りそうだ。
「俺さ、苦手なんだよね。ラインとかSNSとか」
言いながら高槻はポケットからスマホを取り出す。
「口では思ったこと言えるけど、文章になると考えちゃうっていうか」
(あ、俺と同じ……?)
「昨日もさ、本当はすぐ返信しようとしたんだけど、打って消して打って消してばっかしてたらなんかわけわかんなくなって」
思わず、ふっと笑ってしまった。
「え? なに?」
「いや、ごめん。続けて」
少し不思議そうな顔をしてから、またスマホに視線を移す。
「結局、必要最低限の短い返事になっちゃうんだよね」
高槻は友達とのトーク画面を見せてくれた。覗き込むと、短い言葉ばかり並んでいる。
「……高槻ならべつにそれでいいと思う。そういうキャラだって、みんなわかってるし」
高槻は俺の言ったことに納得していない様子で、眉根を寄せた。
「やだよ。浅見にはそんな風にーー返信短い冷たい奴だって思われたくない」
「え? 俺はそんなこと思ったことないけど」
「ほんと?」
「高槻と話したことある人なら、そんな風には思わないだろ」
「よかった」
「俺、浅見とは顔をみてちゃんと話したい……ていうか、できるだけ一緒の時間を過ごしたい……って、俺なに言ってんだろ」
高槻は照れたように笑って、手の甲で口元を隠す。視線が合わない。
(え……)
さっきまでのイライラがどこかに消えて、俺もつられて笑ってしまった。胸の奥が、じんわりあたたかい。うまく言えないけど。……嫌じゃない、と思った。



