特別の、その先

 休み時間、トイレから戻ってきてスマホをチェックする。

 (うわっ!)

 画面には通知がずらりと並んでいた。SNSにメッセージ、グループトーク。上から下まで途切れない。それらの通知を一つ一つチェックし、いいね!やコメントを返していく。正直内容なんてあまり見ていない。とにかく反応するだけで精一杯。

 (一通りおわったかな……あっ!)

 最大の敵、クラスのグループトークが残っていた。なんと、未読121件!

 「はぁ~……」

 ため息を吐きながらラインアプリを開く。ざっと流し見たところ、天気の話や1時間目の日本史教師に対するいじり、腹が減ったや眠いなど、雑談レベルの内容。

 (どうでもいい話ばっか。でも、たまに大事なの混ざるから無視できない)

 俺は少し考えてから、笑っているネコのキャラクタースタンプを選んだ。送信しようとして手が止まる。

 (いや、やっぱなんかコメント返した方がいいか……)

 『俺も腹減った コーヒーしか飲んでない』

 (……だからなに!? これは違うな)

 打っていた文章を消す。

 『カミセン今日も寝ぐせついてた だる』

 (いや、もうその話題おわってるし)

 再び、打っていた文章を消す。

 『ワンピースめちゃめちゃおもろい!』

 (ん~~読んでない人もいるしな……)

 またまた、打っていた文章を消す。

 「浅見、ここわかる? 俺、今日、当たるかもなんだよな」

 前の席の友人・田辺に数学のプリントをみせられた。課題として出されたものだ。数学教師は、その中の問題をランダムに選んで、その日の出席番号の生徒を指名して解かせる。

 「あ、これはさ、こっちの公式をあてはめてーー」

 解説をすると、ありがとう、助かったと言って前に向き直った。と同時に、授業開始を告げるチャイムが鳴る。

 (やば、まだ返信できてない!)

 『明日、午後から雨ふるらしい』

 俺は無難に天気の話題を提供して、そっとスマホの電源を切った。とりあえず安心、けど、ほんのちょっと息苦しい。